
北朝鮮で鳩肉が「高級料理」として消費されている。長期化する慢性的な食糧難のなか、当局主導で小型家禽の飼育や栄養管理、科学技術農業による「生活型タンパク質」の供給を多様化させようとする動きの一環とみられる。
2025年10月に平壌を訪れたロシアのインフルエンサーが公開した動画によると、平壌市内のあるレストランのメニューには「鳩の唐揚げ」をはじめとする複数の鳩料理が記載されていた。
北朝鮮ではこれまでも、国内のさまざまなメディアを通じて、鳩肉が栄養補給や健康回復に良い食材として紹介されてきた。平壌の一部の飲食店では、キジ・ウズラ・鳩料理が「特別食」として出されているとの証言もある。脱北者によれば、「鳩肉は健康に良いと宣伝されていたが、韓国のように道端の鳩を食べるわけではなく、専用に飼育された食用鳩を使っている」と語る。
こうした鳩肉の利用は、慢性的な食糧不足とタンパク質供給の不足に対処するための戦略と位置づけられる。北朝鮮はこれまで、ウサギ・ウズラ・アヒル・ヤギなどの小型家畜・家禽の飼育を奨励しており、学校・軍部隊・協同農場単位での「タンパク質自給体制」構築に力を入れてきた。狭い空間でも飼育でき、飼料の負担も比較的少ないという利点があるためだ。
特にウサギは繁殖力が高く、家庭はもちろん、企業所など職場でも「後方事業」の一環として飼育が奨励されている。食肉として利用できるほか、皮は工業製品の原料にもなるため、「効率の良い家畜」とされている。
同時に、北朝鮮は最近、公式報道で、栄養管理と科学技術農業の重要性を各分野に強調している。農業科学・温室栽培・新品種の開発などの「技術論」が強調されており、食糧不安の緩和を試みる一方で、国内的には農業改革と成果を演出する意図が透けて見える。
今年に入っても北朝鮮は、科学技術による農業革命を繰り返し主張し、生産量の拡大を奨励している。ただ一部では、タンパク質供給の不安定さを隠すため、保健や栄養と科学技術を結びつけたプロパガンダを強化し、「状況が改善している」との錯覚を与えようとしているのではないかとの見方もある。
(c)news1

