2025 年 5月 8日 (木)
ホーム政治弾劾決定後、前韓国大統領夫妻に迫る検・警・公の全面捜査…偶然か、必然か

弾劾決定後、前韓国大統領夫妻に迫る検・警・公の全面捜査…偶然か、必然か

2025年4月11日午後、ソウル市龍山区の大統領公邸を離れるユン・ソンニョル(尹錫悦)前大統領と妻キム・ゴニ(金建希)氏=共同取材(c)news1

韓国憲法裁判所による弾劾決定で「不訴追特権」を失ったユン・ソンニョル(尹錫悦)前大統領夫妻に対し、検察・警察・高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の3機関が全面的な捜査に乗り出している。

6月3日の大統領選挙を控え、検察改革が争点として浮上する中、司法機関の一斉捜査が進む現状に対し、「政治的な示威行動ではないか」とする批判と、「憲法判断に伴う当然の法的手続き」とする声が交錯している。

◇公職選挙法違反で本格捜査へ、8月には時効

ソウル中央地検は4月29日、ユン前大統領を公職選挙法および政党法違反の疑いで告発した人物を呼び、告発人として事情を聴取した。5月1日と2日には、市民団体代表らも相次いで呼ばれた。

捜査の発端は、2022年の大統領選当時にユン・ソンニョル氏が、義母チェ・ウンスン氏や妻キム・ゴニ氏の関与が疑われる「ドイツモーターズ株価操作事件」などについて発言した内容が虚偽であるとして、選挙法違反が指摘されたことだ。

告発から約1年9カ月が経っての捜査再開は、ユン氏の弾劾により選挙法違反に関する6カ月の公訴時効が再び動き出したためだ。時効は8月初旬に満了を迎えるとされる。

一部では「選挙を控え、検察が自身の存在感を誇示するために動いている」との批判もある。ある元検事は「時効を逃すわけにはいかないが、タイミングが政局的な判断と見られる恐れがある」と述べた。

◇公認介入・株価操作疑惑も再捜査、初の私邸家宅捜索も

中央地検の特別捜査チームは、キム・ゴニ氏の「公認介入疑惑」に関して、関係者の召喚を本格化させており、キム氏への聴取に備えて準備を進めている。

また、ソウル高検は4月25日、キム・ゴニ氏の「ドイツモーターズ株価操作事件」に関して、2022年の不起訴処分を覆し、異例の「直接再捜査」に踏み切った。担当検事には刑事部のチェ・ヘングァン氏が任命された。

検察内部でも「事件の重大性を踏まえると、初動を担った地検が再捜査を担うのが適切」との意見もあるが、今回の動きには、上層部の指示が反映されている可能性もある。

キム・ゴニ氏を不起訴としたイ・チャンス中央地検長、チョ・サンウォン第4次長、チェ・ジェフン反腐敗2部長の3人は、この判断を理由に憲法裁で弾劾審査を受けており、今回の再捜査にも影響を与えたと見られている。

◇ついに尹前大統領の私邸を家宅捜索

4月30日には、南部地検がソウル・瑞草洞のアクロビスタにあるユン前大統領の私邸を家宅捜索した。

この捜索は、呪術師のチョン・ソンベ氏を巡る政界口利き疑惑に関連しており、夫婦の私邸が強制捜査を受けたのは今回が初めてとなる。

さらに公捜処も、ユン氏が大統領在任中に「海兵隊員死亡事件」捜査に圧力をかけたとされる件で、容疑者として調査を進めており、最近は当時の関係者の携帯電話フォレンジックを再開している。

警察もまた、大統領選当時にユン氏がソウル・新沙洞で秘密裏に“非公開キャンプ”を運営していたという疑惑に関して捜査を進めている。

◇「不訴追の盾」消失後の本格捜査、今後の展開は

法曹界では「不訴追特権」が失われたことにより、複数の捜査機関が同時に動くのは必然と受け止められている。

ユン前大統領夫妻をめぐる法的責任の有無は、6月の大統領選にも影響を与えかねず、検察や司法の中立性が厳しく問われる局面となっている。

(c)news1

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