韓国の国政課題の中で、女性家族省が単独で扱うものがない。これが「女性家族省の廃止」に合理性を持たせる論理だ。
性平等や女性政策の主務省庁として、女性家族省の調整・総括機能はなくなり、女性家族省の主管業務とされた「ジェンダー暴力防止の国家責任強化」もなくなった。
ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権では、女性家族省は終始曖昧な立場をとることになった。
ユン氏の大統領当選直後、女性家族省の業務報告は30分という異例の短時間で終わった。
◇「イデナム」の失望
ユン政権発足から半年近くがたった昨年10月、女性家族省廃止を骨子とした政府組織改編案が発表された。
女性家族省を廃止し、主要機能である青少年・家族・女性政策や女性の権益増進に関する事務を保健福祉省傘下の「人口家族両性平等本部」に移管するという構想だ。女性雇用支援機能は雇用労働省に移管する。
だが「女性家族省廃止」はその後も、論争と政争の対象になり、膠着状態が続いた。
巨大野党となった「共に民主党」は「女性家族省の機能を変え、拡大再編することがむしろ必要だ」と反対の立場を示し、性平等家族省、性平等家族青少年省の設置を代案として提示した。
これに対し、大統領室は「女性家族省を廃止しても既存の機能をなくすのではなく、むしろ機能を強化する」と強調した。
結局、政府組織改編案は今年2月27日、与野党の意見の差が激しい「女性家族省廃止」が抜け落ちたまま、国会本会議を通過した。ユン政権発足から1年が経ったが、与党の力が弱いことを改めて示した。
女性家族省廃止を支持した一部の「イデナム」(20代男性)らから失望の声が上がった。
◇来年の総選挙見据え
女性家族省廃止に対し、女性関連団体や民主党の反対が依然続く。国民の関心も消えた。
もっとも、来年の総選挙を控え、女性家族省廃止が再び焦点になる可能性はある。だが、一度失望した「イデナム」や、既存の支持層がもう一度、反応を示すかどうかは疑問だ。
選挙対策本部青年本部長として女性家族省廃止公約を主導したチャン・イェチャン青年最高委員は次のように強調する。
「女性家族省廃止だけでなく、触法少年の年齢引き下げなど青年層を意識した公約に関し、政府・与党レベルで実行するという意志が弱かった。民主党に責任を転嫁するのではなく、強力な実行意志を示さなければならない。それが総選挙の戦略でもあり、道理だと思う」
(つづく)
(c)MONEYTODAY