2025 年 4月 18日 (金)
ホーム政治尹錫悦氏の大統領罷免後も続く「心理的内戦」…韓国社会が抱える深い分断

尹錫悦氏の大統領罷免後も続く「心理的内戦」…韓国社会が抱える深い分断

ユン・ソンニョル氏罷免後、最初の週末となった5日、ソウル・光化門一帯では罷免賛否を巡る集会が開かれた(上)「主権者市民の勝利の日」集会(下)「罷免無効」を求める集会(c)news1

韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)氏が大統領を罷免されたことで、政治的には「弾劾政局」は終息した。しかし、賛否で国民の世論が二分された状態は依然として続き、「心理的内戦」とも言える対立が当面解消されないとの見方が強まっている。

罷免決定から数日経過したが、保守系のオンラインコミュニティやチャットグループでは「憲裁の判決に従わない」とする書き込みが相次いでいる。

一部の支持者の間では「保守系の憲法裁判官が脅迫を受けた」とする陰謀論まで拡散しており、これを根拠に「弾劾判決は無効」と主張する声もある。

さらに最近では「ユン・アゲイン(Yoon Again)」というスローガンが広まり、ユン・ソンニョル氏の再出馬を求める動きも見られる。この主張は、現在、内乱罪容疑で拘束中のキム・ヨンヒョン(金龍顕)前国防相が獄中から発信した書簡に端を発している。そこでは「憲法裁判所の罷免決定を受け入れたうえで、再びユン氏を大統領に選ぼう」と呼びかけている。

ただ、韓国の憲法裁判所法第54条第2項では、弾劾によって罷免された者は5年間、公務員に就任できないと規定されており、現時点での再出馬は不可能だ。さらに、ユン氏は内乱の首謀者として起訴されており、今後の裁判で禁錮以上の有罪判決を受ければ、公職選挙法上の被選挙権も制限される可能性がある。

それでもこうした主張が消えない背景には、数カ月にわたって続いた弾劾反対集会などを通じて「自分たちが正しい」という信念が強化されたことがあるという。憲法裁判所が全員一致で罷免を決定したことで法的な論争は沈静化したが、心理的には納得できない「認知的不協和」の状態に陥っていると指摘されている。

ソウル大学心理学科のクァク・グムジュ教授は「自らの判断が間違っていたと認めることは非常につらいため、信念を維持しようとする心理が働く。結果として『相手が間違っている』と責任を転嫁し、怒りが暴発することもある」と説明する。

怒りや喪失感に支配された支持者たちは、現実を受け入れるために「出口」を求め、同じ意見を持つ人々と集い、次の戦略や選挙に向けた活動にエネルギーを注ぐ傾向があるという。

ノ・ムヒョン(盧武鉉)、パク・クネ(朴槿恵)両氏に続く3回目の弾劾を経て、韓国社会の国民統合はさらに遠のいたとの悲観的な見方も出ている。

明知大学政治外交学科のシン・ユル教授は「ノ・ムヒョン氏の弾劾で与野党が互いを敵視するようになり、パク、ユン両氏と続く弾劾で社会の分断がより深刻になった」と述べたうえ「与野党の対立構図が社会全体に波及し、極端な分極化が進んでいる」と警鐘を鳴らした。

(c)news1

RELATED ARTICLES

Most Popular