
韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領に対する弾劾審判が、憲法裁判所で最終段階を迎えている。弾劾訴追案が提出されてから92日目となり、これまでの歴代大統領の弾劾審理期間を超えた最長記録を更新した。歴代大統領のノ・ムヒョン(盧武鉉)氏63日、パク・クネ(朴槿恵)氏91日を超えた形だ。
今回の審判は、弁論終結後も異例の長期審理となっている。ノ・ムヒョン氏は14日、パク・クネ氏は11日で判決が下されたのに対し、ユン大統領は今月19日の時点でその期間を超過する。これにより、20日から21日にも宣告が下される可能性が高まっている。
当初は先週末の宣告が有力視されていたが、拘束されていたユン大統領が突然釈放されたことで、憲法裁判所がより慎重な判断を迫られている。法曹界では、今週末の20日または21日に宣告される可能性が高いという見方が広がっている。
今回の弾劾審判は、これまでの前例とは異なり、同時に複数の弾劾案件を審理していることが影響しているとの指摘もある。過去2人の大統領の審判時には他の案件はなかったが、今回はイ・ジンスク放送通信委員長や、チェ・ジェヘ監査院長ら、多くの官僚に対する弾劾審判が同時に進行していた。
さらに、ハン・ドクス首相やパク・ソンジェ法相の弾劾案件も並行して審理されており、これがユン大統領の弾劾審判の長期化を招いた一因とされている。
ただし、憲法裁判所はユン大統領の弾劾審判を最優先案件と位置付けており、複数案件の並行審理というよりは、裁判官の全員一致による結論導出が難航しているためだという見方もある。特にユン大統領の拘束取消が、一部裁判官の判断に影響を与えた可能性が指摘されている。
現在、判決の可能性は「全会一致で弾劾認定」「6対2」「5対3」「4対4」など多様に取り沙汰されており、結果の予測は難しい。弾劾認定には裁判官6人以上の賛成が必要であり、3人以上が反対すれば即座に職務復帰となる。
法曹界では、18日にパク・ソンジェ法相の初公判が予定されているため、その後の20~21日にユン大統領とハン・ドクス首相の案件が同時に宣告される可能性があると見られている。特に両案件は「非常戒厳」を巡る問題が共通しているため、どちらか一方だけを先に宣告することは避ける方針のようだ。
憲法裁判所は現在、裁判官による合議の進行状況や日程は一切非公開としており、判決日程についての公式発表は控えている。
一方で、現政権発足以降、提出された13件の弾劾訴追案のうち8件が既に棄却されており、これがユン大統領の弾劾審判に影響を与えるかにも注目が集まっている。
ユン大統領側はこれまで、野党による無理な弾劾推進が国家非常事態を招いたと主張しており、弾劾の棄却を求めている。ユン大統領の弁護を務めるユン・ガプグン弁護士は「他の弾劾案件がすべて棄却されていることが、非常戒厳の正当性を証明している」と述べ、ユン大統領に対する弾劾も早期に棄却されるべきだと強調した。
ただ、憲法裁判所はこれまでの判決で「弾劾訴追権の乱用」については認めていない。特に検事3人の弾劾訴追案を棄却した際にも「政治的目的や動機があったとしても、弾劾訴追権の乱用とは断定できない」と明記している。
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