
韓国教育省が推進するAIデジタル教科書(AIDT)の導入から2カ月が経過したが、学校現場での活用率は1割にも満たない状況が続いている。出版社は運営費すら賄えず、損失が拡大する中、政府に対する集団訴訟の可能性も浮上している。
国会教育委員会所属のペク・スンア共に民主党議員室によると、AIDTプラットフォームに登録した学生の1日あたり接続率は10%未満にとどまった。全国の多くの学校がAIDTを導入した大邱でも最大接続率は11%で、世宗市では中高生の接続率がそれぞれ0.3%、0.5%と極めて低いことが確認された。
教育現場ではAIDTの積極的な使用を避ける傾向が強い。世宗市のある教師は「生徒の学力診断や評価の一部には使うが、ほとんど活用されていない」とし、特に英語科目では「チャットボットが正常に作動しないなど、既存のデジタル教材よりも質が劣る」と不満を漏らした。
また、年配教員を中心に機器操作が難しいケースも多く、教師自身もAIDTの技術的な壁を感じているという。
大邱市の小学校教師も「児童がAIDTにログインするのに時間がかかり、IDやパスワードを忘れるとさらに準備時間が延びる」「2~3回使用したが、既存の教科書やPPT、ゲーム形式の授業の方が効率的だと感じた」と語った。
教育省は今年1学期のAIDT導入率が約30%であることから、2学期には70~80%に上昇すると期待していた。しかし現場では、低い活用率が学期中も続くとの見方が強まっている。
出版社にとっては苦しい状況だ。AIDT導入は学校の自主判断に委ねられており、今年の導入率は32.4%にとどまっている。ユーザー数が増えなければ、投資費用どころかサーバー維持費や研修費用すら回収できない状態だ。
AIDTを積極推進してきたイ・ジュホ副首相兼教育相もまもなく退任し、1カ月後には新政権が発足する。こうした不透明な状況を受け、損失がさらに拡大した場合、出版社が政府を相手取って共同訴訟を起こす可能性が高まっている。
AIDT関係者は「現在の購読料収入では、投資額はおろか運営費すら賄えない」と嘆いている。
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