韓国最高裁はこのほど、被告が知らない間に録音された携帯電話の通話内容も、プライバシー侵害の程度が大きくなければ一部は証拠として有効との判断を示した。公共団体など委託選挙に関する法律違反罪で起訴された選挙運動員2人に懲役10月、水産業協同組合長の元候補者に懲役1年4月を言い渡した原審を確定させた。
判決などによると、2019年3月の選挙で運動員2人は元候補者を当選させるため金品の提供や有権者への訪問、大量メッセージ送付など事前運動をしたとして起訴された。
検察は運動員1人から押収した携帯電話のデータ復元などのデジタルフォレンジック技術で、その運動員と妻、他の被告との間の通話録音ファイルを確保し、証拠として提出した。
運動員の携帯電話の通話録音機能はオフになっていたが、これらファイルは夫の不倫を疑った妻がひそかに自動録音機能を作動させたため保存されたものだった。
運動員と妻の通話は片方が録音されることを知っていたが、第三者(他の被告)は録音に同意していないため、通信秘密保護法によると「不法傍受により録音された通話」として証拠能力が否定される。このため裁判では、当事者の同意なしに録音された通話記録に証拠能力があるかが争点になった。
1審は運動員と妻以外の通話にも全て証拠能力があると判断し、3人を有罪とした。しかし、2審は妻との通話は証拠能力があるとしつつ、他の被告との通話録音ファイルは証拠として認められないと判断。そのうえで、運動員2人は1審を維持して懲役10月、元候補者は最終責任者という理由で量刑を加重し懲役1年4月とした。
3被告は録音ファイルが「個人による違法収集証拠」だとして上告したが、最高裁は運動員の妻が対話しながら録音したので運動員のプライバシーの秘密が侵害されたとは見難く、音声権などの侵害程度も比較的軽微だと判断。「正当な証拠収集だ」と結論付け、上告を棄却した。
一方で、運動員と他の被告の通話は「相手の同意のない録音」で盗聴に該当するため証拠能力がないとして、2審の判断を踏襲した。
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