家庭から美容整形外科の手術室に至るまで、インターネットに接続して日常生活で広く使用されている「ネットワークカメラ(IPカメラ)」。その映像が最近、韓国内外の違法ポルノ共有サイトに流出したのを受け、韓国政府が対策を強化することになった。
韓国科学技術情報通信省は14日、個人情報保護委員会、放送通信委員会、警察庁などの関連部署と共に「IPカメラセキュリティー強化策」を策定し、推進すると発表した。
今後は、IPカメラの設計・製造時に文字、数字、特殊記号を組み合わせたパスワード設定機能の搭載が義務付けられる。また、病院、ショッピングモール、プールなどの多目的施設や主要な情報通信基盤施設に設置するIPカメラには、セキュリティー認証を受けた製品の使用が必要となる。
韓国政府は、国民の日常と密接な場所ではセキュリティー認証を受けたIPカメラの使用を義務付けるなど、公共・民間の映像情報処理機器関連法の制定も目指す。
政府がこのような対策に乗り出した背景には、IPカメラのハッキングによりプライバシーが国内外の有害サイトなどに流出する事故が頻発していることがある。今年8月、韓国内の家庭に設置されたIPカメラから流出した数百本の映像が、海外のサイトやテレグラムなどのメッセンジャーで無差別に拡散される事態が発生し、衝撃を与えた。これらの映像には、女性の着替えや恋人同士の親密な瞬間などがそのまま映っていた。
さらに、これらの映像を1本あたり10~15ドル(1553~2330円)で販売しているケースも確認され、映像の閲覧数は最大14万回に達している。しかも、多くの被害者が被害に気付いていないとされている。
関係筋によると、流出した映像の大部分は中国製IPカメラで撮影されたものとされる。韓国国内のIPカメラ市場で中国製製品のシェアは約80%を占めており、これまで関連のセキュリティー対策が不十分であったとの指摘も出ている。
韓国の最大野党「共に民主党」のキム・ビョンギ議員は先月25日に開催された国会政務委員会の個人情報保護委員会に対する総合監査で「中国製IPカメラのハッキング事件が国民の日常生活を深刻に脅かしているにもかかわらず、政府の対応があまりにも消極的で失望している」と批判した。
これに対し、個人情報保護委員会のコ・ハクス委員長は「個人情報保護委員会としても非常に重大な問題とみており、現在科学技術情報通信省、関税庁などを含むタスクフォース(TF)をつくり対策を進めている」と答弁した。
政府は今回の対策を策定するにあたり、IPカメラのハッキング事例の大半が「パスワードの脆弱(ぜいじゃく)性」に起因している点に注目した。
通信網に接続すると録画映像を外部に共有したり、遠隔操作が可能となったりするIPカメラは、初期設定時にパスワードを変更するだけでもハッキングや映像流出のリスクを減らすことができる。しかし、パスワード設定が国産製品のみ義務付けられている。また、ユーザーが「0000」や「1234」などの単純なパスワードを設定するケースが多いため、ハッキングに対するリスクは依然として大きい。
政府はIPカメラの利用者が購入や利用の段階でセキュリティー規則を認識し、実行できるよう、製造・流通業者と協力して利用者への案内を強化する方針だ。また、複数のIPカメラを設置する事業者にもセキュリティー規則を順守するよう指導し、映像流出事故が発生した場合には規則順守状況を確認し、違反時には罰金を科す方針だ。
さらに政府は、海外からの直輸入品など国内外で流通するIPカメラのセキュリティー水準を調査・点検し、改善が必要な事項を見つけ出す。電波認証(KC認証)を受けていないIPカメラについては、国内流通を遮断するため集中取り締まり期間を設ける。
放送通信委員会のコ・ナクジュン課長は「デパートや病院などの多目的施設だけでなく、プールやピラティス教室、ヨガ教室など身体の露出がある場所でもセキュリティー認証を受けたIPカメラの使用を義務化する」と述べた。
ユ・サンイム科学技術情報通信相は「デジタル深化の時代において、日常生活の至る所でIPカメラが広く活用されており、安全に利用できる環境を整えることが重要だ」と述べ、関連部署や業界と協力し、IPカメラのセキュリティー強化策を推進する意向を示した。
また、個人情報保護委員会のコ委員長は「技術の進展により、IPカメラや壁掛けモニターなど個人情報を収集できる多様なIT製品が日常生活に利用されている。個人情報の侵害の懸念が増大しているため、今回の対策を通じて消費者が安心してIPカメラを使用できる環境を整える」と述べた。
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