現場ルポ
暖かくなるにつれ、白髪交じりのお年寄りが集まってきた。彼らはベンチごとに集まって座り、囲碁を打ったり、会話を楽しんでいたりした。マスクをあご付近までずらしたり、「ノーマスク」の状態になったりして、緑色の酒瓶を回し飲みしていた。近くに設置された「ソーシャルディスタンスを遵守しましょう」というプラカードに注意を払う人はいなかった。彼らの横を通り過ぎる人はみな、急ぎ足だった――。
ソウル市松坡(ソンパ)区にある松坡ナル公園の今月19日の様子だ。18〜20日にはソウル市鍾路(チョンノ)区のタプコル公園や龍山(ヨンサン)区の漢江公園などでも、同じような光景が広がっていた。高齢者の一部では、このように集まりが後を絶たない。若い世代に比べて高齢者は感染リスクも高く、専門家はこの状況に懸念を抱く。取り締まりも不十分なため、市民の不安も高まる。
新型コロナウイルスの感染状況の悪化を受け、今月18日から私的な集まりにおける許容人数が、首都圏・非首都圏で「4人まで」と縮小された。レストランやカフェ、遊興施設の営業も午後9時までとなり、ワクチン未接種者の場合、PCR検査の陰性証明書がなければ「ホンパプ(おひとり様ご飯)」となる。
だが、一部の高齢者の間には、こうした措置は行き過ぎだと反発する声が出ている。そもそも一人暮らしの高齢者は孤独に悩まされる場合が多く、ワクチン未接種者の場合に人と会うこと自体を禁止されてしまえば、“収監生活”と違いがないという指摘だ。このため、高齢者の基本的な権利を考慮した対策を先行すべきだという声も上がっている。
◇早朝から夜遅くまで
多くの高齢者は早朝からこうした場所に集まり、昼や夜まで会話を楽しむ。
21日、ソンパナル公園――。カップラーメンを手に持っていたAさん(73)はこんな話をした。
「レストランに行くと、貧しい人と裕福な人で区分される。でも、公園にはそんなものはなく、みなが友達だ。家に帰っても1人きりで、テレビを見ることがすべて。夜遅くになるまで帰りたくない」
大勢で集まったお年寄りたちは必ずしも防疫規則に敏感であるわけではない。マスクを着けずに4人以上が1カ所に集まって食事をすることもある。
タプコル公園では20日、一目で100人を超えているとわかるほど、高齢者が集まっていた。囲碁を打つ人の背後に数十人がくっついてアドバイスをしていた。防疫規則に違反した状態で集まっていても、こうした高齢者を注意したり、取り締まったりするという雰囲気になっていない。この状況に不安を訴えるのが公園の周辺住民だ。
タプコル公園にあるレストランの店員からこんな言葉が聞かれた。「レストランで100日間もソーシャルディスタンスや集合禁止を守ったところで、外であんなにくっついていては何の役に立つのか。お年寄りが寂しいことは理解できるが、新型コロナが彼らを避けるわけでもないので、対策が必要だ」
◇高齢者の孤独に対策を
防疫の専門家は、高齢であるほど新型コロナに感染しやすく、重症化する割合も高い。こうした高齢者の集団にこそ、急いで対策を講じる必要があると指摘する。高麗(コリョ)大・九老(クロ)病院感染内科のキム・ウジュ教授はこう警告する。「わが国で、若い層より、60代以上の新規感染者が多い。基本的に高齢層はワクチンを接種しても抗体の予防効果が低く、ブレイクスルー感染やデルタ株に弱いため、集まることは危険だ」
その一方、高齢者団体の間からは、新型コロナの流行以降に深刻化した高齢者の孤独に備える策が必要だという声も上がる。
統計庁の2021社会動向調査によると、70代以上のうち「寂しさを感じている」人の比率は昨年、すべての年齢層の中で最も高い30%台だった。鍾路区のある高齢福祉団体の関係者は「防疫規則も当然重要ではあるが、高齢者にとって会合は孤独死などの予防策となるものであり、無条件にやめさせることは難しい。高齢者に対する根本的な対策を先行させるべきだ」と訴える。
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