中学2年生のAさんは、あるメタバースプラットフォーム内で制服を着た男性キャラクターBから「王様ゲーム」をしようと提案された。「特定の建物に先に登る」「早く食べる」などメタバース内の特定の課題に挑み、勝った側の願いを叶えようというものだった。
そんなもんか、と思って応じていたら、Bは「写真を送ってほしい」と言う。その後、Bは別のアカウントまで作ってAさんについて回った。性的羞恥心を誘発するメッセージはもちろん、メタバース上のAさんの自宅周辺で落書きまでした。BはAさんにウソの噂を広めると脅迫した後、アバターを通じて性交類似行為をするよう要求した――。
メタバースプラットフォームの一部で、言葉によるセクハラ・ストーキングなどサイバー暴力が相次いでいる。このような行為は、個人が仮想空間活動のために作った「アバター」が対象になっている。仮想空間は現実世界と比べ、他人に対する心理的境界が低い。それゆえ、放置すればデジタル性犯罪に発展する危険が高い。
メタバースの主な利用者である未成年者が犯罪に露出しやすい構造であるものの、捜査システム・規定は不備であり、改善が必要だ。
◇メタバース利用者10人に7人が児童・青少年…性犯罪の恐れ↑
韓国で広く知られているメタバースプラットフォーム「ゼペット(ZEPETO)」では、昨年12月基準でグローバル利用者は2億5000万人を突破した。韓国の利用者の割合は10%前後で、主な利用者は未成年者と女性だ。情報分析「ニールセン・コリア(Nielsen Korea)」の調査によると、ゼペット利用者10人に7人は児童・青少年という。性別では男性23%、女性77%で女性が圧倒的だ。グローバルトップのメタバースプラットフォーム「ロブロックス(Roblox)」の利用者の様子も似たようなものだ。
このようなメタバースで、未成年者に身体部位の写真を要求するのはもちろん、アバターに対してわいせつ行為を要求するなど、新種の犯罪が発生している。アバターに性交類似行為の姿勢を取らせ、性的羞恥心を起こさせたりもしている。過去、テレグラム(Telegram)を利用してオン・オフラインを行き来しながら続いた性犯罪がメタバースで繰り返される兆しを見せているのだ。
利用者層の主流が、性犯罪に対する意識が固まっていない児童・青少年であるうえ、利用者が増加する傾向を考慮すれば、決して軽く見るべき問題ではない。たとえ被害を受けても立証が容易ではない。専門家の間には、明らかになっていない被害事例も多いという声が上がる。
ある30代の男がゼペットで昨年4月から約1年間、未成年者に「ゲームアイテムを提供する」とそそのかして身体部位の写真を受け取り、性搾取物を製作した例があり、最近拘束された。
メタバース内では性別、年齢、アバター状態を自由に設定でき、匿名性が保障される。別のアカウントでも運営でき、役割・状況劇(その場でテーマに合わせて、ストーリーを作って演じる劇)など固有の文化が既に存在し、犯罪につながる可能性がある。メタバース内で性的嫌がらせが頻発し、その内容が残る場合、2次被害の憂慮も高い。
「タックティーン明日・児童青少年性暴力相談所」によると、SNS、サイバー空間、携帯電話を通じて発生したオンライン性搾取犯罪は、2016年全体の4.7%から2020年12.9%に3倍近く増加した。
問題はメタバース関連の犯罪が急増する兆しを見せているという点だ。警察大・治安政策研究所は「治安展望2022」と題した報告書で、メタバースプラットフォームを中心に、財産権侵害や児童・青少年への性的暴力など、新種の犯罪が増加するだろうと見込んだ。
国会立法調査処科学放送通信チームのチョン・ジュンファ調査官は「メタバースの利用者が増え、アバターに対する性犯罪も発生している。10代や女性利用者の規模が増加する傾向を考慮すれば、今後、増加する恐れがある」と警告する。
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