この流れのなかで誕生した男性仮想人間チルジュは、VIVE STUDIOSが2015年制作した仮想現実(VR)映画「ボルト:混沌の石(Volt Chaos Gem)」の主人公「ボルト(BOLT)」を源流とする。
15分の短編映画「ボルト」は2019年、米映画祭「シネクエスト」でVR分野ベスト賞を受賞し、中国の現地VR映画館で人気ランキング1位を獲得するなど人気を集めた。
これまでの仮想人間のほとんどは、その活動をInstagramなどSNSに限っていた。これに対し、チルジュは音源の発売、映画、ドラマ、ライブ公演などの分野で、アーティストとしての活動領域を確固としたものにしている点で他と異なる。
VIVE STUDIOS関係者は「単にSNSでのインフルエンサーという概念ではない。アーティストとして成長させる。女性仮想人間のように、ファッションやビューティーなど限られた分野ではなく、多様なプラットフォームで活躍する予定だ。長い間築き上げてきたチルジュの世界観を少しずつ公開する」と話している。
ただ、男性仮想人間に対する関心は現時点では、相対的に低調だ。このムードはしばらく続くという分析もある。仮想人間は主に、ファッションやビューティー企業のマーケティング手段として活用されるため、産業界で活用する場合も、市場の流れが容易に変わるのは難しいとみられているのだ。
ちなみに、人工知能(AI)、ディープラーニング映像生成企業「クレオン(Klleon)」が昨年9月に公開した「ウジュ」も、アイドル兼俳優のチャ・ウヌに似せて話題を集めたが、人気は一時的なものだった。
「ウジュ」のInstagramへの投稿も昨年11月18日、妹の「ウナ」を紹介する映像を最後にアップロードされていない。フォロワー数も4月25日午後3時現在、315人に過ぎない。一方、「ウジュ」を継いで誕生した「ウナ」は手堅く投稿し、活発なインフルエンサー活動を続けている。
業界関係者の間では、女性にアピールすることの多いファッションやビューティーの分野では、女性仮想人間を活用した方が効果的だという意見もある。「相談相手や商品販売従事者における女性の占める割合が大きい。顧客層も女性のほうが多いため、同性のキャラクターに、より親しみを感じているようだ」。IT業界関係者はこう分析している。
慶熙(キョンヒ)大学経営大学院のキム・サンギュン教授は「仮想人間は本質的に人間に代わる手段として活用される存在だ。男性に比べて、女性が人を直接相手にする対面業務を担当する場合が多く、女性仮想人間の産業的活用幅が広いという認識が強い」と指摘。
そのうえで「女性の客層が相対的に厚いファッション、ビューティー分野では女性仮想人間に対する注目度が高い。ただ、事実上、女性の仮想人間も広告モデルの代替など使用領域が極めて制限的な状況だ。仮想人間が性別の違いなく大きく成長するためには、実際に人間と自由にコミュニケーションができるよう、全般的な“現実感”を向上させなければならない」とみる。
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