現場ルポ
韓国のユン・ソンニョル（尹錫悦）次期大統領が、ソウル市龍山区（ヨンサング）の国防省庁舎に執務室を移すという計画を公式化し、龍山区の住宅価格の行方に関心が集まっている。不動産業界は、執務室の移転が好材料になるか、悪材料になるかに神経を尖らせている。
不動産業界関係者によると、執務室移転に伴い、周辺の再開発・再建築をはじめ、龍山公園、龍山国際業務地区の造成など、開発事業に及ぼす影響が地元住民の関心事になっているという。
住民らは大統領の警護やセキュリティーの問題で、高度な規制がかけられるのではないかと懸念してきた。加えて、近隣で進められている各種の整備事業にもブレーキがかかるとの観測も出ていた。ただ、ユン氏は先週末、執務室移転による追加規制はない、と強調したことで、地域世論はいったんは和らいだ様子だ。
ユン氏は「龍山はすでに軍事施設保護を前提に開発が進められている。移転しても追加規制はない」と述べている。
オ・セフン（呉世勲）ソウル市長も最近、記者団の取材に「龍山開発事業に支障がないか検討した結果、移転によって生じる建築制限は心配するほどの状況にはない」と繰り返し強調した。
三角地（サムガクチ）駅近くのある不動産仲介業者関係者はこう打ち明ける。
「みなが気にしていたのが、執務室移転が開発事業の足かせになるのか、というという点だった。最初は悪材料か、という問い合わせの電話が多かったが、追加規制がない、ということから問い合わせは大きく減った。むしろ住宅価格が上がるのではないかという話まで出ている。ユン氏が国民とのコミュニケーションを強化すると言ったので、龍山公園造成が早まるだろう。大統領のせいで開発が阻まれた、という誤解が生じないよう事業も速度を出すと思う」
さらに、近隣の交通渋滞解消のために、西氷庫路（ソビンゴロ）一帯の首都圏電鉄京義（キョンウィ）・中央線など、鉄道の地下化にも弾みがつくという見通しも出ている。ユン氏は現在、国防省が使っている三角地駅周辺の北側正門ではない南側の西氷庫路に執務室の正門をつくるという。
依然として懸念もある。別の仲介業者関係者はこう指摘する。
「追加規制がないと言ったが、“移転過程で保安問題が生じれば、やはり調整されるのではないか”と疑問を抱く住民たちが、かなりたくさんいる。現実的にどれほど守られるか注視する雰囲気だ」
龍山区の漢江路洞（ハンガンノドン）に住むという50代の住民も「米軍基地が返還されれば、規制が少し緩和されると思った。その緩和される規制が、次は大統領執務室が入ってから維持されることになる。“規制がない”というのは言葉遊びに過ぎない。開発だけの問題ではない。国防省による規制と、大統領警護は次元が異なるだろう。大統領の移動のたびに交通、通信問題が生じるだろう。小さな不便はあるはずだ」
区内でも、隣接地域を分けて判断すべきだという意見も出ている。執務室の移転が龍山には悪材料かも知れないが、場所によって与える影響が異なるという見方だ。
漢江路1街の特別計画区域と三角マンション再開発推進地域がある三角地駅一帯は、保安上の理由で規制が生じる可能性があるという予想が出ている。この一帯は、執務室予定地と0.5キロも離れていない。
一方、大々的な増改築や再建築が活発な二村洞（イチョンドン）は2キロほど離れているため、大きな影響はないという見方が出ている。地元の不動産仲介業者関係者はこうささやく。
「この付近は執務室と距離もあり、高級高層住宅タワーの複合施設『チェリトゥス』が既にあるため、新たに規制することは容易ではない。大統領執務室の持つ象徴性、既にある開発の弾力性などを考慮すれば、むしろ開発事業が進んでいる二村洞の住宅価格には好材料だ」
一方、龍山区漢南洞（ハンナムドン）一帯が大統領執務室の移転でさらに注目を集め、価格も強気を見せる可能性があるという見通しも出ている。ユン氏は漢南洞陸軍参謀総長公館を増改築して官邸として活用する案を検討中だ。
漢南洞は芸能人ら高所得者が多数居住する高級住宅の密集地だ。国土交通省の実際の取引価格公開システムによると、漢南洞の「LaTERRASSE漢南」は先月15日、専用面積244.22平方メートル（3階）が100億ウォンで取引された。
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