3日の戒厳令事態に続き、弾劾政治局面に突入した韓国で、流通業界は「政治リスク」への懸念を強めている。弾劾に関連する論争が収束しない中、企業の売り上げに波紋が広がり、さらなる反応を恐れて沈黙を守る姿勢が目立つ。
コンビニ業界では、弾劾関連の集会地域で売り上げが急増している店舗もあるが、業界全体では増加率の公表を控える動きが見られる。ある関係者は「過去の弾劾時には売り上げを公開したこともあったが、現在は社会的リスクが大きく、特定企業が注目されることを避けるため、情報公開を中止している」と説明している。
食品やファッション業界では、アンバサダーを務める有名人が政治的な支持や反対の立場を示すことで、「不買運動」や「購入支持」の論争に巻き込まれるケースが懸念されている。たとえば、ファッションブランド「ニューバランス」を運営するイーランドワールドは、アンバサダーである歌手兼俳優のIU(アイユー)や俳優コン・ユの政治的行動が論争を引き起こし、対応に追われている。
一部の必需消費財企業では、これまで政治的な影響を受けにくいとされてきたが、「不買運動」の拡大に対する不安が広がっている。ある食品業界関係者は「現在のところ顧客からの具体的な苦情や意見は寄せられていないが、今後の動向を注視している」と語っている。
ファッション業界では、アンバサダーの社会的影響力を反映して契約が結ばれるため、政治的リスクやプライベートのスキャンダルが業績に与える影響が大きい。これに対応し、契約内容に違約金や活動停止に関する条項を明記するなど、迅速な対策を講じる企業も増えているという。
ただ、一部の専門家は、弾劾支持派と反対派による論争がSNS上で激化しているものの、実際の売り上げには大きな影響を与えないとの見方を示している。極端な意見が一部の消費者に限られているため、業界全体への影響は限定的と考えられる。流通業界の関係者は「アンバサダーの影響力が強い業界では、一定の損失は避けられないが、これが業界全体に大きな影響を与えるかは未知数だ」と指摘する。
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