
トランプ米大統領が掲げる「アメリカ・ファースト(米国優先主義)」外交が、経済のみならず安全保障政策にも大きな影響を及ぼすとみられている。最近では在韓米軍の役割変化や一部撤収の可能性が浮上し、トランプ氏自身も「同盟国すべての安全保障を米国が担う時代は終わった」と発言するなど、安全保障のパラダイムが転換しつつあるという見方も出ている。
このような米国の変化は、韓国にとっては拡大抑止の縮小という懸念材料であり、一方で北朝鮮にとっては対米戦略の再構築を迫る「シグナル」になり得るという分析もある。
◇トランプ政権の「対話ジェスチャー」と韓国への圧力
トランプ大統領は24日(現地時間)、陸軍士官学校の卒業式で「米国以外の国の防衛はもはや最優先事項ではない」と発言し、他国の安全保障への関与を減らす意向を示唆した。
在韓米軍の防衛費負担増や兵力削減に関する議論が進むなか、韓国側からすれば、これは「悪い兆候」として受け取られている。防衛費交渉はトランプ氏本人が強硬に推進してきた政策であり、在韓米軍の再編や役割縮小も米政権内部で検討されているという。
これにより、在韓米軍の役割が「対北朝鮮抑止」から「対中国戦略」へとシフトするとの見方も広がっている。北朝鮮に対する軍事的な抑止力に空白が生じる可能性も指摘される中で、トランプ氏が北朝鮮に対して比較的友好的な姿勢を示していることも、懸念を深める要因となっている。
トランプ氏はすでに北朝鮮を「核保有国」と呼び、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記との過去の関係をたびたび強調してきた。
◇北朝鮮、当面は冷静姿勢維持か…注目集まる「5カ年政策」
このような環境の変化は、北朝鮮にとっても対米戦略の見直しを促すきっかけとなる可能性がある。過去に在韓米軍撤収や米韓合同軍事演習の中止を要求してきた北朝鮮にとって、自らの要求に合致する状況が進んでいると見ることもできる。
一方、北朝鮮はトランプ氏のこうした「ラブコール」にもかかわらず、今のところ冷淡な反応を保っている。
25日には国防省政策室長名義の談話を通じて、米国防情報局(DIA)が「北朝鮮はロシアとの連携を通じて米本土や韓国に対する軍事的脅威を増した」と指摘した報告書を非難。「戦争の可能性を示唆する挑発的な発言だ」と反発した。
またキム総書記も今年2月、「米国は世界の紛争の背後にいる」と述べ、核戦力の強化を続ける意思を明言している。昨年12月の党中央委員会総会でも「最強硬の対米政策」を採択したことを明らかにしている。
こうした背景から、北朝鮮が目に見える政策転換に乗り出す可能性は当面低いとみられる。第2次トランプ政権の対北朝鮮政策が明確になっておらず、韓国も大統領選を控えている状況下で、北朝鮮はより有利なタイミングを見極めつつ主導的な戦略を模索するとの見方が優勢だ。
北朝鮮による米国への判断と対応は、年内に発表される予定の新たな「5カ年国政計画」によって明確になる可能性が高い。北朝鮮は2021年、経済および軍事力強化を目的とする5カ年計画を採択し、5年ごとの新方針制定を制度化している。
次の党大会は、今年12月末から来年1月にかけて開かれる見通し。その間、北朝鮮はロシアとの関係を強化しつつ、米国の出方を見極める戦略に出るとみられる。
統一研究院のホン・ミン首席研究員は「北朝鮮は在韓米軍問題よりも、トランプ政権の対中国戦略に注目している可能性が高い。同盟さえも“取引対象”とみなすトランプ政権との間で、どのようなディールが可能かを北朝鮮は慎重に模索しているはずだ」と分析している。
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