◇随所に歴史が盛り込まれ
青瓦台の建物は、韓国近・現代史の重要な分岐点になったところが多い。
青瓦台と言えば思い浮かぶのは本館。ここは大統領が執務したり外国の国家元首らを接見したりする建物だ。
かつて「日本の植民地時代に朝鮮総督が居住していた場所を大統領執務室として使うのは好ましくない」という主張があり、1991年に新たに建てられた。伝統的な木の構造と宮殿建築様式を基に、最も格調高く、美しいとされる入母屋造り。15万枚余りの韓国式の青い瓦で葺いたのが特徴だ。この青瓦は100年間持つという。
本館の右後方には大統領の家族が過ごす官邸がある。大統領の公的な業務空間と私的生活空間を区分するために1990年に建設された。
大統領の私的生活空間であるため、これまでの青瓦台見学でも公開が制限されていた場所だ。母屋と離れ、客人の接待に使われる舎廊斎(サランチェ)など伝統韓屋に似せた雰囲気で建築されている。宮殿建築様式である入母屋式屋根に韓国式の青瓦を乗せたカギ字型の屋根だ。
官邸から少し下に降りてくると、常春斎(サンチュンジェ)がある。
ユン・ソンニョル氏が大統領に当選したあと、現職だったムン・ジェイン(文在寅)氏と会談した場所だ。常春斎は大統領が青瓦台を訪れる貴賓を迎える空間で、洋式の木造建物を1983年に伝統的な韓屋式家屋に改築した。2017年に訪韓したトランプ米大統領(当時)がここに招待されたことがあり、昨年は6大企業のトップが当時のムン大統領と昼食をともにした。
1990年に完工した春秋館(チュンチュグァン)は、青瓦台の東端に位置する建物。大統領の記者会見などのプレスセンターとして使われた。
高麗・朝鮮時代に歴史の記録を担当した官庁である藝文春秋館(イェムンチュンチュグァン)に由来する名称で、さかのぼれば古代中国史書五経の一つである「春秋」に突き当たる。厳正に歴史を記録するという意味で、自由言論の精神を象徴する。切妻屋根に葺いた素焼の瓦とともに、伝統的で優雅な趣を醸している。
緑地園(ノクチウォン)は、青瓦台の中で最も美しい場所に挙げられる。
120種余りの樹木と歴代大統領の記念植樹がある。緑地園を象徴する韓国産の松の巨木が最も有名で、樹齢は約150年で、高さ16メートルに達する。毎年春の子供の日の行事をはじめ、父母の日、障害者の日など各種行事が開かれる。
本館から西側に移動すると迎賓館が見える。
その名の通り、大規模な会議や国賓のための公式行事を開催するために使われた。1978年に建設され、18の石柱が建物全体を支える形で雄大な姿を誇る。この石柱は高さ13メートル、周囲3メートルに達する。花崗岩をそのまま削っており、隙間が一つもないのが特徴だ。
迎賓館から西にもう少し行くと、七宮(チルグン)がある。朝鮮時代に王を産んだのに、王妃にはなれなかった側室の位牌を祀った場所だ。
粛宗の側室で英祖(ヨンジョ)の母親である淑嬪崔(スクピンチェ)の位牌を祭った毓祥宮(ユクサングン)をはじめ、合わせて7つの祠堂があるため「七宮」と呼ばれる。1968年以降、一般の出入りが禁止されていたが、2001年から再び公開された。
青瓦台の西端には公園「ムクゲの丘」がある。宮井洞(クンジョンドン)の旧中央情報部(KCIA)の隠れ家だった「安家(アンガ)」の跡地に設けられた市民公園だ。これまでは青瓦台内への出入りが禁止されていたが、1993年に青瓦台前の道が開放された後、市民公園として造成された。公園内には国花ムクゲとともに各種の樹木と野生の花が植栽されている。
◇1周するのに1時間…登山コースも
青瓦台の主要な建物を見学するには約1時間かかる。さらに散策するためには2時間を見ておく必要がある。
青瓦台の見物客は、正門だけでなく春秋門(チュンチュグァン)、迎賓館など3カ所に入場できる。青瓦台特別開放の運営側は出発地点によって3種類のコースを推薦している。ただ、今回の特別開放では各種物品整理などの影響で、建物内部までは見られない。
今回の青瓦台の開放で、山登りも人気を集めるだろう。北岳山(プガクサン)登山道も開放されたからだ。
七宮から白岳亭(ペガクチョン)まで600メートル、春秋館から白岳亭まで800メートルの登山道が開かれた。青瓦台から北岳山に至る登山道が開かれるのは、1968年に北朝鮮武装スパイが青瓦台に侵入した「キム・シンジョ(金新朝)事件」で閉鎖されて以来、実に54年ぶりだ。
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