韓国サムスン電子が揺らいでいる。AIメモリ市場における競争力低下により、半導体事業が苦戦を強いられ、加えてモバイルや家電事業の業績も悪化しており、「総合的な危機」との見方が広がっている。
サムスン電子は最近、人員削減や経営効率化に乗り出しており、イ・ジェヨン(李在鎔)会長のリーダーシップに注目が集まっている。米ブルームバーグ通信の3日付報道によると、サムスン電子は東南アジア、オーストラリア、ニュージーランドなどの海外法人で数千人規模の人員削減を実施中で、最終的には海外人員の約10%を削減する見通しという。
さらに、先週には米ニュージャージー州にある北米法人で125人が解雇された。この多くはデジタルエクスペリエンス(DX)事業部に所属していたとされ、業界ではこの削減を「非常事態経営」の一環とみている。
かつてメモリ市場でトップの地位を誇ったサムスン電子の半導体部門(DS)は、AI分野で競争優位を失いつつある。2023年に始まった半導体の需要回復は主にAIチップが牽引していたが、サムスン電子は高帯域幅メモリ(HBM)などのAIメモリ分野で他社に遅れを取っている。SKハイニックスやマイクロンがエヌビディアに最新HBM3E製品を供給する中、サムスン電子は未だ性能検証を通過していない。
加えて、ファウンドリ(半導体受託生産)事業でも市場シェアを、世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)に奪われており、2024年第2四半期の市場シェア差は50.8ポイントに達している。
その他の事業部門も厳しい状況にある。家電事業部は赤字が続き、モバイル事業部では折り畳み式スマートフォンの販売が伸び悩んでいる。この影響で、サムスン電子の株価は10月2日、一時6万ウォン台を割り込んだ。
サムスン電子はこうした状況を打開すべく、経営戦略の見直しに動いている。半導体部門では一部のファウンドリ投資を保留し、研究人員をメモリ事業部に振り向けて、メモリ分野での競争力強化を図る方針だ。家電事業部では、AI家電を中心としたプレミアム製品ラインを展開し、収益性向上を目指している。
12月初旬に予定されている定期人事では、大規模刷新の可能性が高い。昨年は経営陣の変動を最小限に抑えたが、今年は大幅な人事異動が避けられないとの見方が強まっている。
また、このタイミングでイ・ジェヨン会長がリーダーシップを発揮し、未来ビジョンを示すのではないかという期待も高まっている。業界関係者は「サムスン電子内外で危機感が高まっているため、会長が前面に出る可能性は否定できない」とみる。
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