「お金をいくら払って連れて来たと思っているの?」「君は一生僕の足にキスしても足りない」
生みの親の同意なしに海外に養子縁組され、初日から性的虐待を受けたキム・ユリさん。我慢できなくなったキムさんが「韓国に戻してほしい」と言うと、返ってきた答えはこれだった。
過去64年間に海外に養子縁組された約16万人の児童のうち、相当数が実の両親が生きているにもかかわらず「孤児」との戸籍が作成されたという状況が明らかになっている。
キム・ユリさん(50代)は、11歳まで平凡な家庭で過ごしてきた。両親の離婚などの事情でしばらく弟と施設に預けられた。
キムさんは、母親が送った手紙や小包などを見ながら施設の厳しい生活を耐えていた。だが「あなたの母親があなたたちを見捨てた」として、フランスへの養子縁組が決まったと知らされた。
そして二人はパリから10時間以上かかる小さな村に到着した。「到着して長い時間車に乗った。車に酔い、弟が吐いたが、養父は車を止めて弟を殴って髪の毛をつかみ、それを食べろと言いました」。辛い初日だった。
養父母はキムさん兄妹を「チンキー」と呼んだ。「チンキー」は米国などで使われる黄色人種に対する差別用語だ。キムさんはなぜそのように呼ぶのかと尋ねると「お前たちはチンキーじゃないか」という言葉だけが戻ってきた。
わずか11歳の時、養父の性虐待は始まり、キムさんは17歳になった年に家を出て養父母を告訴した。
その後、フランスの保護センターで過ごし、大学にも進学したが、自分が捨てられたという考えはトラウマとして残った。
キムさんは「韓国を訪ねたが、親に一度しか会っていない」と話した。「親は養子に出したということを認めなかったので『なぜ私の親はこのように無責任な人なのか』という思いがした」
しかし、しばらく後で、親がキムさんを海外へ養子に出すことに同意したことはなく、養子縁組書類にはキムさんが「孤児」だと明示されていたことを知った。
「母から見れば、私たちが突然いなくなったのです。韓国の海外養子縁組の最も悲惨なことは、家族を破壊してしまうことです」
(つづく)
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