韓国で「生成AIシンドローム」が広がっている。生成AIとは、利用者との対話を通して、文章や画像などのコンテンツを生成していく人工知能のことだ。昨年11月に画期的な生成AIである「チャットGPT」が登場したのを機に、AI開発競争に火がついた。私たちの日常、社会のあちこちにAIが急速に浸透し、既存の慣行や秩序に大きな変化と衝撃をもたらしている。利便性が高い一方で、代筆や盗作などの問題事例も相次いでいる。生成AI時代に突入した韓国の現状と議論、そして対処法を探る。
◇「チャットGPT、Aキーの歌をひとつ作曲して」
「Q:歌を1曲作りたいんだけど、Aのキーを使ったコード進行で」
「A:もちろんです! ここにAキーで進行する歌があります!」
ユーチューブ「コマンドスペース」を運営するク・ヨハン氏は最近、チャットGPTで4分の歌を作った。ク・ヨハン氏は、希望するコードで進行する曲を書いてくれと伝え、「AI(人工知能)が作ってくれた作品」をテーマに簡単な歌詞も付けてほしいと要望した。すると、出てきた歌詞が多少ストレートな表現だったので、「少し詩や文学作品のような歌詞に変えることはできないか」と求めた。
さらに「いくつかのコードを使ってジャズ風に変えてほしい」と頼み、対話を繰り返した結果、「Alive or Artificial?」という歌が完成した。
ギターを手に歌うまでにかかった時間はわずか10分だ。ク・ヨハン氏は「まだ、完成させるまでに必要な作業は残っているが、AIと対話する感覚は、本当に新鮮だ」と話した。
韓国は今、チャットGPTブームにわいている。料理レシピのように単純な趣味や好奇心に応えるのはもちろん、研究や学習、ビジネス、資産管理、コンテンツ製作など創意性が必要な領域まで活用の場が広がっている。まさに「最強の助っ人」だ。
チャットGPTは普通の人々の「日常」に浸透している。人々の暮らしや仕事に「適切に」活用される一方で、米国で起きたのと同様に、大学生のレポート代筆など負の「副作用」ももたらしている。
◇疲れない、礼儀正しい教師、広告コピーまで
韓国国内でも世代と階層、職業を問わず多方面で活用が進んでいる。とりわけ衝撃を受けているのが学術界だ。研究の設計段階から実際の論文作成に至るまで、既にチャットGPTの多様な活用事例が明らかになっている。論文抄録の文字数要約から目次作成までの作業をわずか数秒で処理し、創意的な研究タイトルまで提案する。
大学関係者の反応が熱い。オンラインコミュニティ「エブリタイム」では、チャットGPT活用経験が一番の話題だ。高麗(コリョ)大学融合エネルギー工学科に通うキム・ウクヨン氏は、チャットGPTを活用し、「融合生命工学」の期末試験の勉強時間を大幅に減らした。
チャットGPTに、特定の概念について要約するよう求め、さらに教授が教えた観点に従って整理してほしいと要望。その回答を得て効率的に覚えるというやり方だ。
キム・ウクヨン氏は「生命工学の試験は可能な限り多くの事例を要約・暗記することが重要だが、チャットGPTを使えば、人間がやるよりもうまく整理ができ、スピードも速い」と語った。複雑な数学・科学問題には幅広く対応ができ、社会・歴史の知識も膨大だ。特に英語をはじめとする外国語学習能力は抜群だ。
韓国知能情報社会振興院(NIA)のキム・テウォン首席研究員は報告書で「チャットGPTは既存の翻訳機と比べても優れた性能を見せ、単純な翻訳を越えて矯正や文法的な誤りまで説明してくれる。英語を含む多様な外国語教育に活用できるだろう」と評価した。
プログラミング分野でのチャットGPTの活躍はさらにめざましい。簡単なコーディングを任せたり、コード上のエラーを見つけて修正したりする作業にも使われる。ある会社員は、自身のPRホームページを作り、チャットGPTの助けを受けた。
既存のプログラミング言語「パイソン」が有料化されたため、無料だった別のプログラミング言語「R言語」にコードを変換する必要が生じた。これをチャットGPTに頼むと、あっという間にコーディングが終わってしまった。会社員は「90%のコードがきちんと作成され、とても有用だった」と驚いた。
(つづく)
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