長年にわたり人の足が途絶えた南北軍事境界線のある非武装地帯(DMZ)。ここに毎年7000羽ものタンチョウが訪れている。人がいないため安全な寝場所が確保され、農家が稲わらで穀物を覆い、餌を残していることで「共生」が実現している。
韓国の著名な生態学者であるチェ・ミョンエ延世大学教授は、これを「偶然の積み重ねが生んだ奇跡」と呼ぶ。タンチョウだけでなく多様な湿地生物が共に生きる生命の空間が形成されていると語った。
人の影がなく、自然のままに再生した土地は、かつてほとんどタンチョウの姿が見られなかったが、現在では世界のタンチョウ個体数の半分以上がこの地で冬を越すまでになっている。
チェ教授によると、この奇跡的な現象は自然に対する過剰な介入を控えることの重要性を物語っているという。
朝鮮戦争(1950~53)では、韓国江原道鉄原(チョルウォン)は激戦地となり「鉄の三角地帯」として激しい砲撃にさらされ、すべての生命が消え去ったかのように荒廃した。しかし戦後、韓国と北朝鮮が2キロずつ後退してDMZが設けられてから70年、人の立ち入りが制限される中で自然が息を吹き返し、現在ではその80%が森林化し、約5000種の生物が生息、絶滅危惧種も75種にのぼるとされている。
鉄原の湿地と稲作地帯は、タンチョウにとって理想の生息地となった。地元の農民らは冬にはタンチョウのために稲わらを置いて、浅い湿地を提供するなどの工夫を続けて、共存の道を模索している。
その一人は次のように語る。
「この地は、タンチョウと時間を分けて利用し共存できる場所だ」
自然に委ねた土地は、生物多様性の宝庫となった。
「DMZはもはや私たちの土地ではなく、人類全体に属する生態系の重要な遺産である」
チェ教授はこう表現し、この地を守るための意識が重要だと訴えている。
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