2025 年 12月 13日 (土)
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半導体の代わりにイオンで…韓国の研究チームが公開した「超低消費電力型の神経素子」

イオンダイオードの素材設計および特性化の概念図。図Aはポリマーチェーンの緩み挙動を示した模式図、図Bは陽イオン性共重合体におけるバランスの取れた伝導性を示している。図Cはイオン崩壊現象の概略図、図Dはエネルギー消費量と信号対雑音比のグラフ=漢陽大学/スタンフォード大学キム・ヨンミン博士研究員(c)KOREA WAVE

韓国研究財団は12月12日、漢陽大学のキム・ドファン教授と韓国科学技術院(KAIST)のムン・ホンチョル教授の共同研究チームが、機械的刺激によって自ら電流の流れを制御し、超低電力で動作する「機械刺激ゲーティング型イオンダイオード素子」を開発したと発表した。半導体の代わりにイオンで制御が可能な超低消費電力型の神経素子で、低電力の自律感知システムや触覚神経網素子の開発が加速するものと期待されている。

メガ・ニュース(MEGA News)のパク・ヒボム記者の取材によると、「機械刺激ゲーティング」とは、圧力や応力などの機械的な力によって電流の流れを自律的に制御する現象を指す。「イオンダイオード」は、電子の流れを制御する半導体ダイオードと似た仕組みで、イオンの流れが一方向にのみ通過し、電流の方向を制御する素子だ。

人間と機械のインターフェース用のソフト電子皮膚では、外部からの圧力など特定の刺激に対して選択的に反応し、その刺激を信号に変換して記憶できる人工神経素子が不可欠とされる。しかし、従来のイオンダイオードは、内部に含まれる陽イオン・陰イオン間の伝導性の非対称性により、界面でのイオン枯渇層の形成が非常に不安定で、外部刺激に対する感知の選択性が低かった。また、動作時の電流応答が一定でなく、安定した信号処理が困難だった。

研究チームは新たな分子設計戦略によって、高分子内の陽イオン・陰イオンの伝導性バランスを精密に調整し、界面に安定かつ厚みのあるイオン枯渇層を形成する方法により、外部刺激に自律的に反応する超低電力の人工ダイオード神経素子を開発した。

研究チームは「この新しい素子はロボットの指に装着した実験で、リアルタイムの圧力強度に応じてLEDの明るさが段階的に変化する、人間の触覚を模倣した反応を示した。圧力がある基準を超えた時だけ電流が流れる閾値(いきち)応答型の特性や、繰り返しの刺激に反応が徐々に強まるシナプス可塑性(synaptic plasticity)も実現した」と説明した。

シナプス可塑性とは、神経細胞(シナプス)が刺激の強さや繰り返しの頻度に応じて、信号伝達の効率が変化するという生物学的な学習メカニズムを指す。

また研究チームは、この素子が静止状態でパルス1回あたり0.41nJ(ナノジュール)、圧力がかかった状態でも1.49nJという超低消費電力で動作し、従来のトランジスタベースの神経素子に比べて約10倍から最大50倍以上高いエネルギー効率を達成したと補足した。

キム・ドファン教授は「今回の研究は、従来の半導体材料による電子制御ではなく、イオンを活用した情報処理システムに関するもので、学術的意義が大きい。生体神経の超低電力な電気化学的信号伝達の原理を人工素子に実装した点で、AI型の感覚感知・信号処理が可能な素子開発の新たな突破口と評価できる」と語った。

ムン・ホンチョル教授は「従来の電子トランジスタベースのシステムが持つ構造的な複雑性やエネルギー非効率の問題を根本的に改善し、人工触覚や神経型AIなど、知能型の触覚神経網や自律感知ロボットプラットフォームへの応用が可能になる」と付け加えた。

(c)KOREA WAVE

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