集中豪雨による被害拡大を受け、ソウル市が「半地下住宅建築全面禁止」政策を打ち出した。週内にも各自治区に地下・半地下の住居用建築を許可しない指針を伝える。また、政府と協議して半地下住宅建築を全面禁止する内容の建築法改正を推進し、10~20年間で半地下住宅を全面閉鎖するという。
ただ、こうした方針に対して、実効性が疑問視されている。賃貸料が安い半地下住宅に住むのは大半が脆弱階層であり、移住が困難とみられるためだ。政策が効果を出すためには、綿密な移住対策を先行させるべきだという指摘が出ている。
◇地上階物件の半額レベル
ソウル市は2001年と2010年夏にも、1日に200~250ミリの豪雨が降ったことから、半地下住宅新規建築許可を制限する案を政府に提案、現在の建築法11条に根拠規定につながった。
しかし、規定が整備されたあとも、市内には新たに約4万世帯の半地下住宅が供給された。市が自治区所管の小型建築物の許認可を全面的に管理できていな実態を示す事例となった。
ソウルに半地下住宅が消えないのは「家賃」のためだ。
オンライン不動産物件を調べれば、新築ビラの半地下住宅を簡単に見つけることができる。大半が保証金500万ウォン、家賃40万ウォン前後で、同じ大きさの地上階物件の半額レベル。低所得層には事実上、これに代わる住宅がないのが現実だ。家主も倉庫や駐車場より半地下住宅を好む。
市はこうした事情を考慮した対策を検討中だ。現在、半地下住宅に居住している借家人が引き払ったあと、そこを倉庫や駐車場など「非住居用」に転換する建物所有者に「リモデリング費用」を支援する▽再開発など整備事業推進時に容積率で恩恵を与える――などが計画されている。
ソウル住宅都市公社(SH)が予算を投じて空室になっている半地下住宅を買い入れ、住民共同倉庫やコミュニティ施設にリモデリングする案も推進する。
◇浸水被害で緊急支援住宅
また、半地下住宅の代替住居地はあまりない。直ちに移住できる公共住宅が不足しているためだ。
SHによると、昨年末時点で公社が保有しているマンションなど公共住宅は10万1998戸。大部分が入居済みだ。災害緊急支援用の空き家を含め、直ちに入居できる住宅は約800戸に過ぎない。
SHは負債削減のため、年平均2400億ウォン以上投入していた買い入れ賃貸住宅予算を削減する傾向にあり、短期間に多くの半地下住宅を買い入れる余力がない。したがって、約20万世帯に達する半地下住宅居住者の移住需要に、応えることができないのが実情だ
一方、韓国政府は集中豪雨で家を失った被災者が安全な家に移ることができるよう、公共機関が保有する「空き家」に最長2年間居住できるようにする方針だ。
国土交通省は被災者緊急住居タスクフォース(TF)を設け、半地下などの浸水被害を受けた被災者に緊急支援住宅を供給する。被災者に支援する住宅は、韓国土地住宅公社(LH)が従来保有する買い入れ賃貸住宅のうち、現在、空き家になっている物件を活用する案が有力だ。政府は2017年の浦項地震や2019年の江原山火災の時も、災害で家を失った被災者に同様の方法で緊急住居を支援している。
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