
北朝鮮が友好関係を築いてきたベネズエラのマドゥロ大統領が、トランプ米大統領による軍事作戦で失脚したことが、北朝鮮指導部に大きな衝撃を与えているようだ。今回の事態は「体制転換(レジームチェンジ)」の具体例とされ、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が最も警戒してきたシナリオが現実化した形だ。トランプ氏が北朝鮮との対話を呼びかけつつ、他方で独裁者を排除する行動に出たことで、キム総書記が米側の「本音」を疑う可能性が高いとの見方が出ている。
ベネズエラと北朝鮮は、長年にわたって反米路線を共有してきた象徴的パートナーだ。2015年には北朝鮮がカラカスに大使館を開設、2019年にはベネズエラも平壌に大使館を設けた。マドゥロ氏は2019年、平壌訪問の意向を公に表明したこともあり、両国は単なる友好国を超えた関係と認識されていた。
北朝鮮は最近、ベネズエラ情勢に関連し、国営メディアを通じて連日、米国の介入を非難する論調を展開。しかし、政府としての公式声明は控え、外電引用による報道にとどめていた。
今回のベネズエラ作戦では、大規模戦闘ではなく指導者の排除を目的とした限定的な軍事行動が採られた。この点についても北朝鮮は注目しているとみられる。情報戦・心理戦による内部崩壊の誘発も含まれており、北朝鮮が従来から警戒してきた「低強度型レジームチェンジ」の典型例といえる。
2019年のハノイ米朝首脳会談で「裏切られた」経験もあるキム総書記にとって、トランプ政権への不信感は一層強まるものと見られる。今後は米国との対話模索よりも、ロシアとの関係強化や「反米連帯」拡大に注力する公算が大きい。
専門家は、トランプ氏が4月に予定する中国訪問を、北朝鮮との対話再開の機会と見ていた韓国政府の戦略も不透明になったと指摘する。「仮に4月にトランプ氏が会談を提案しても、北朝鮮は応じない可能性が高い」との声もある。
国連安全保障理事会は、米国の軍事行動を受け、5日(現地時間)に緊急会合を開催する予定。中国やロシア、イランなど、米国と対立関係にある諸国の動向は、北朝鮮にとっても重要な判断材料になる。
中国はマドゥロ氏と特使を通じて会談後に米軍が介入した経緯もあり、外交的非難は強めると予想されるが、実質的な介入にまでは至らないと見られている。ロシアも同様に、米国とのウクライナ停戦協議を控える中、強硬対応には出にくいと外交関係者は分析する。
キム総書記にとって最も懸念されるのは、自らが失脚した際に中国やロシアが態度を一変させる可能性だ。このようなシナリオが現実味を帯びる中、北朝鮮が今後さらに対米外交の扉を閉ざすリスクが高まっている。
北朝鮮は今年1~2月ごろに約5年ぶりとなる党大会を開催する。これを機に、新たな外交方針を打ち出す可能性がある。韓国政府は北朝鮮がこの場で対米対話に前向きなシグナルを出すと見ていたが、ベネズエラ事態により対話の可能性はさらに後退したとの見方が広がっている。
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