
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が今月3日に平壌・和盛地区の住宅建設現場を視察した際、党書記団を一人も同行させなかったことが分かり、その異例の動きに関心が集まっている。
7日付の党機関紙・労働新聞によると、キム総書記はコンピューターゲーム館などの重要なサービス施設の運営準備状況を確認するため、まもなく竣工予定の和盛地区3段階住宅建設地を視察した。
報道によれば、視察には「設計機関・運営準備機関の関係者や建設部隊の指揮官らが同行した」とされているが、同行者の中に党中央委員会の党書記は一人も含まれておらず、写真や映像からも確認されなかった。
公開された写真からは、党中央規律部のキム・ジェリョン(金在龍)部長、キム・ファソン党中央委員、ヒョン・ソンウォル(玄松月)党中央宣伝部副部長らが随行していたとみられる。
党書記局は、分野ごとの政策立案と執行を指導・監督する党の中枢組織であり、通常、キム総書記の公開活動には各分野の書記が必ず同行している。現在、書記局にはチョ・ヨンウォン(趙勇元)、パク・ジョンチョン(朴正天)、リ・イルファン(李日煥)、リ・ヒヨン(李熙用)、キム・ドックン(金徳訓)、チョ・チュンリョン(趙春龍)、チェ・ドンミョン(崔東明)の7氏が名を連ねているとされるが、今回は経済担当のキム・ドックン書記や、最側近のチョ・ヨンウォン書記も不在だった。
また、今回の視察は同行者の数自体も非常に少なく、先月15日に実施された同地での視察では、キム・ドックン書記や経済担当のパク・テソン(朴泰成)首相ら十数人が同行していたのとは対照的だ。
特に注目されるのは、ここ最近、党書記たちの対外的な活動が著しく減少している点だ。キム総書記の「影の随行者」とも呼ばれる最側近のチョ・ヨンウォン組織書記は、先月1日を最後に公の場から姿を消しており、リ・イルファン宣伝書記も今年1月2日以降、北朝鮮メディアに登場していない。
この状況を受けて、専門家の間では、今年10月に予定される党創建80周年や、年末から来年初頭にかけて開催が予想される第9回党大会に向けた「特別任務」に従事している可能性が指摘されている。5カ年計画の総括や新たな国家戦略構築、国家的イベントの準備などに関与しているという見方だ。
一方で、党内で幹部への検閲・粛清が進行している可能性もある。北朝鮮では今年1月、南浦市温泉郡で発生した党幹部の飲酒接待事件を糾弾する党書記局拡大会議を開催し、党規律の強化を強調していた。これを機に、高官全体への検閲が実施された可能性も否定できない。
また、今回公開された写真の時計が午後10時を回っていたことから、視察が深夜に実施された可能性があり、キム総書記が“抜き打ち”で現場を訪れ、綱紀粛正を図ったとも考えられる。
軍関連のパク・ジョンチョン書記(軍事担当)、チョ・チュンリョン書記(軍需担当)らは軍関連行事に通常通り同行している一方、経済や民生分野の現場では党書記たちの存在感が薄れている点も異常な兆候と受け止められている。
また、最近の視察で頻繁に登場しているキム・ファソン党中央委員という人物が、党内で存在感を強めている点も注目される。キム・ファソン氏は正確な党内肩書が不明であるものの、主に経済関連の視察に常に同行しており、キム総書記のすぐそばで動いている姿が目立っている。
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