
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の年末の公式日程に、娘が欠かさず同行し、存在感を一段と強めている。2022年に初めて姿を現して以降、軍事分野に限られていた随行範囲は、民生や経済分野へと拡大しており、北朝鮮の後継者、次期指導者としての地位を固める動きだとの分析が相次いで示された。
党機関紙・労働新聞は、白頭山近くの三池淵市観光地区で、20日から2日間にわたり5つのホテルの竣工式が開かれたと報じた。キム総書記は20日のイッカルホテルと密営ホテルの竣工式に、妻リ・ソルジュ(李雪主)氏や娘とともに出席した。
この日の労働新聞には、竣工式関連写真だけで計85枚が3面にわたって掲載された。キム総書記が主要幹部とともに施設を視察する姿が収められているが、総書記の最も近くに立っていたのは高官ではなく娘だった。
黒のロングレザージャケットに黒のパンツ、靴、手袋まで全身黒で統一した装いの娘は、住民がキム総書記に歓声と拍手を送る場面でも一歩も退かず、父と並んで住民のあいさつを受け、その威厳を誇示した。一方、リ・ソルジュ氏も式典に同席していたが、紙面での露出は極めて限定的で、前列を歩くキム総書記と娘の後方に控える姿がわずかに確認されるのみだった。
娘はこれに先立ち、15日の江東郡地方工業工場、19日の咸鏡南道新浦市工場の竣工式にもキム総書記とともに登場している。年末に一年の経済成果を点検し、成果を宣伝する重要な場面に娘が常に同行していることは、後継者としての象徴的地位を強化する過程とみられている。とりわけ今年は、2021年の第8回党大会で提示された「国家経済発展5カ年計画」が締めくくられる節目の年でもある。
15日の江東郡工場竣工式では、娘がキム総書記より前を歩くように見えたり、総書記が幹部に指示を出す場面でも、独自に周囲を見渡す姿が捉えられ、「最高指導者の儀礼に縛られない特別な地位を得た」との評価も出た。
2022年11月、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17型」の試射現場で初めて姿を見せた当初は軍事行事が中心だったが、最近では地方工場や観光施設など住民の生活に直結する現場にも同行している。これは「未来の指導者」としてのイメージを固める狙いだとの見方が強い。
「娘後継者説」は、今年9月初め、中国の戦勝80周年行事を機にキム総書記の訪中に同行した際、改めて注目を集めた。北朝鮮では最高指導者の子女が中国を訪問すること自体が、事実上の「後継者お披露目」と受け止められるためだ。
その後、約3カ月間公式の場から姿を消していた娘は、11月28日に葛麻飛行場で開かれた「空軍創設80周年記念行事」を機に再登場し、以降は経済・民生分野の視察に連続して同行している。
北朝鮮が5年間の事業を総括し、来年初めの第9回党大会で新たな5カ年計画を策定する節目を迎える中、娘の存在感は一段と強まっている。一部では、第9回党大会で娘に党の公式職責が付与される可能性も慎重に取り沙汰されている。
慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は「北朝鮮はキム総書記の主要成果を誇示する年末行事に娘を同伴させることで、人民が享受する成果が『キム・ジョンウン―娘』へと続く白頭血統によるものだという物語を形成している」と指摘し、「次期党大会で公式な役職に就く可能性もある」と分析した。
(c)news1

