
北朝鮮が11年にわたり開発を進めてきた日本海岸のリゾート地「元山葛麻海岸観光地区」を訪れたロシア人観光客が、現地での体験を語った。その内容は、表向きの豪華さとは裏腹に“監視と演出の観光”という側面を垣間見せている。
英タブロイド紙「デイリー・メール」が8月13日報じたところによると、北朝鮮は今年6月に開業したこの葛麻リゾートを「世界に類を見ない夢の観光地」として積極的にアピールしている。
しかし現在、外国人観光客の入場は原則としてロシア人に限定されている。中国や西側諸国の旅行者は受け入れておらず、極めて閉鎖的な形で運営されている。
◇豪華な施設、だが単独行動は制限
リゾートは最大2万人を収容できるホテルやゲストハウス、4kmに及ぶ白砂のビーチ、ウォーターパーク、ショッピングセンターなどを備えている。レストランでは牛肉、鴨肉、各種海鮮料理が提供されている。
このリゾートを訪れたロシア人女性のダリヤ・ジュブコワ氏は「豪華な新築リゾートとして広く宣伝されていたため、興味が湧いた」と訪問の理由を語った。
彼女は「盗聴などの心配はしなかった。特に問題となるような会話もしなかったから」と述べ、監視への警戒心はそれほど持っていなかったという。
ただ、「どこへ行っても必ず誰かが同行していた。海辺でも誰かが一緒に歩いていた。ただ、軍の護衛のようなものではなかった」とし、自由な単独行動はほぼ制限されていたことを明かした。
同行者たちは「道に迷わないように」と説明していたというが、事実上の“同伴監視”だったとみられる。
◇一部で自由行動も可能、「清潔で洗練された印象」
とはいえ完全に監視下に置かれていたわけではない。ダリヤ氏は「午前2時に一人でホテルを出てビーチを散歩したこともある。そのときは誰からも止められなかった」と話し、一定の自由もあったことを示唆した。
リゾート施設については「建物のデザインや内装は洗練されており、ビーチもきれいに管理されていた」と、全体的には好意的に評価した。
一方で、ロシア紙「コメルサント」のアナスタシア・ドムビツカヤ記者は「朝のビーチが無人だったことや、廊下でビリヤードをしていた職員、やや演出された印象の風景を目にした」とし、自然な日常というよりは“演出された観光地”だったとの印象を語った。
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