
海外の文化や情報の流入を制限してきた北朝鮮で、アメリカやフランスのゲーム開発会社が制作した一人称シューティング(FPS)ゲームが平壌のインターネットカフェでプレイされている様子が確認された。これらのゲームが国外から密かに持ち込まれたか、もしくは北朝鮮が無断でコピーし「自国開発」として宣伝している可能性が指摘されている。
確認されたのは、2025年に平壌・和盛地区にオープンした「和盛コンピューター娯楽館」での様子。中国人旅行者がSNS「X」(旧Twitter)に投稿した映像と写真には、北朝鮮の若者たちが『カウンターストライク2』や『コール オブ デューティ:ブラックオプス3』『トム・クランシーのレインボーシックス』シリーズなど、海外の人気FPSゲームをプレイする姿が収められていた。
現地ではキオスク(無人注文機)端末で空席や利用時間を選び、専用カードを読み取ってログインするシステムが導入されていた。使用可能なゲームは、英語・文化語(北朝鮮の標準語)・中国語の多言語バージョンが存在するという。
これらのゲームは、アメリカのゲーム企業やフランスのユービーアイソフト(Ubisoft)などが開発した作品で、北朝鮮当局がどのようなルートでこれらのソフトを入手したかは不明だ。違法コピーをもとに自国製と称している可能性もある。
北朝鮮は過去にも、国外ゲームを模倣したプロパガンダ用ソフトを制作してきた。2017年には、対外宣伝媒体『アリランメアリ』が、北朝鮮が開発したとするFPSゲーム『アメリカ野郎狩り(Hunting Yankee)』を紹介。敵役として米兵を設定し、倒すことを目的とした内容だったが、グラフィックや構成の面では極めて稚拙な水準にとどまっていた。
一部専門家は、北朝鮮がこのようなFPSゲームを青年層に広める背景に「戦闘的精神の醸成」があると分析している。特に、ロシアへの派兵を「国の功績」として喧伝している現状から見て、若年層の好戦性を高める手段としての利用も考えられる。
ただ、2025年9月に北朝鮮国営メディアが「和盛コンピューター娯楽館」の内部映像を報道した際は、モニター画面がぼかされ、ゲーム内容が特定されないよう編集されていた。
この娯楽館は「平壌ニュータウン」と呼ばれる和盛地区第3段階開発地域に設置されたもので、4月にはキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が竣工前に視察し、「北朝鮮版PC房」としての姿を初めて公開していた。
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