北朝鮮の4・25文化会館で先月28日から3日間開かれた朝鮮労働党宣伝部門の担当者講習会。参加者はマスクをつけず、びっしりと着席していた。いずれも新型コロナ防疫規則に背いているといえる。
党機関紙・労働新聞や国営朝鮮中央テレビを見ると、講習会の参加者はみな、建物に入る前からマスクを着用していなかった。廊下に展示されているキム・ジョンウン(金正恩)総書記の写真を見る際にも、距離を置くことなくメモを取るなど、防疫規則を守らない姿があらわになっていた。
北朝鮮では新型コロナウイルス感染対策のため、マスクの着用やソーシャルディスタンスが防疫規定として掲げられている。この状況のなか、国内向けメディアを通じて、こうした姿が公開されたのは、やや異例だ。
新型コロナウイルスのデルタ型とオミクロン型の2つの変異型をもとに生まれた「デルタクロン」の発生に、北朝鮮当局は特に緊張し、住民に徹底した防疫規定順守を要求している状況でもある。
これまで、北朝鮮ではキム総書記が出席する行事には、参加者全員がマスクを着用しない例が多かった。これは最高指導者の権威を重視する北朝鮮が「防疫優越感」を示そうとする意図だと解釈されてきた。しかし、キム総書記は今回の講習会には書簡だけを送り、参加したわけではない。
北朝鮮は今年1月、これまでの統制中心の防疫から「先進的・人民的防疫」への転換を示唆していた。だが先月8~9日開かれた建設部門担当者の大講習会と、10~11日の実務講習会では、参加者全員がマスクを着用するなど、防疫規則を守った。一方、先月6~7日開かれた最高人民会議は、キム総書記は不参加だったのに全員がノーマスクだった。
北朝鮮は具体的な基準を外部に伝えておらず、現状では、いつ、どんな条件が整えば「ノーマスク行事」とするのか、判断が難しい。北朝鮮が最近公開した非常防疫関連の広報には▽体温37度以上は立ち入り禁止▽マスク着用▽手の消毒▽2メートルの距離を取る――などの防疫指針が盛り込まれている。
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