
今年初めに国際社会で起きた二つの出来事を目にした北朝鮮は、ある根本的な問いに直面している可能性がある。「核を保有する自分たちは本当に安全なのか」という問題だ。
1月には米軍特殊部隊がベネズエラの首都カラカスに侵入し、マドゥロ大統領を拘束して米国へ移送した。さらに2月には、米国とイスラエルの共同での空爆により、37年間イランを統治した最高指導者ハメネイ師が死亡した。
二つの事件は内容こそ異なるものの、結果は共通している。米国が「独裁者」を標的とする軍事行動を実施したという点だ。これはイラク戦争やアフガニスタン戦争以降初めて、いわば「物理的な政権交代」が現実の選択肢として示されたことを意味する。
こうした出来事は、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記にとって、存在そのものを揺るがす恐怖を感じさせる場面だった可能性がある。
マドゥロ大統領は、単に権力を失っただけではない。米司法省が起訴した「麻薬テロ」容疑で訴追され、ニューヨークへ移送された。独裁者の立場から見れば、屈辱的な姿を世界にさらした格好だ。自らが統治してきた国が自分不在でも機能している様子を見ながら、米国の司法手続きを受けることになった。
イランのケースは、これまで「シナリオ」として語られてきた米国の軍事作戦による政権崩壊が、現実となる可能性を示した例ともいえる。これはキム総書記にとって、自ら築いてきた強力な国防力が「国民」は守れても、自分の命を保証するわけではないという認識を与えた可能性がある。自身が死んだ後の世界は、キム総書記にとって意味を持たないからだ。
北朝鮮指導部としては、米国の「政権交代」シナリオに対する現実的な対応策を模索せざるを得ない状況になったとも考えられる。すでに起きた出来事を、実現可能性が低いとして無視することはできないからだ。
実際、トランプ政権は第1期政権時、北朝鮮に対する「斬首作戦」に言及したことがある。2017年末、トランプ大統領とキム総書記が「核ボタン」を巡って応酬し、朝鮮半島の緊張が高まった際、米国では北朝鮮指導部の排除を想定した核攻撃や特殊部隊投入などの軍事オプションが公然と議論された。
元国家安全保障担当大統領補佐官のハーバート・マクマスター氏は2024年の回顧録で、トランプ大統領が北朝鮮の軍事パレードで並んでいるキム総書記ら指導部を見て、「彼らを一度に排除できないか」と尋ねたことがあったと明かしている。また、ボルトン元補佐官も2020年の回顧録で、トランプ大統領が非公開会議で「北朝鮮をどれほど早く破壊できるか」を繰り返し尋ねていたと記している。
さらに昨年、米紙ニューヨーク・タイムズは、2019年2月のハノイ米朝首脳会談を前に、米海軍特殊部隊がキム総書記の通信を傍受する装置を設置するため、北朝鮮東海岸に秘密裏に侵入していたと報じた。キム総書記がトランプ大統領との「蜜月関係」を強調しながら首脳会談を準備していた時期に、米国は同時に特殊部隊を動員して動向を追っていたことになる。米国の実行力が示された事例といえる。
キム総書記は3日から4日にかけて、新型の5000トン級駆逐艦「チェ・ヒョン号」から戦略巡航ミサイルを連続発射した。試験結果に満足感を示し、「海軍の核武装化が順調に進んでいる」と述べた。
一部では、この試験発射が「斬首作戦」への対抗手段を示したものだとの見方もある。地上のミサイル発射台は衛星監視などにさらされやすいが、駆逐艦や潜水艦といった海上戦力は位置を柔軟に変えられるため、平壌や指導部が攻撃を受けても即座に報復できる「第二撃能力」を確保できるからだ。
しかし、まさにその点が北朝鮮のジレンマでもある。これまで核戦力は敵の侵攻を抑止する手段と考えられてきた。だがイランの事例は、核放棄を求める米国の要求を拒めば「命を失う」という新たな結果もあり得ることを示した。
生き残るために核をさらに強化するのか、それとも核を放棄するのか。これが北朝鮮が直面するジレンマだ。
北朝鮮が依然として米国を「無法者」「侵略的本性を持つ国家」と非難しながらも、対話の可能性を完全には閉ざしていないのも、そのためとみられる。
ベネズエラとイランで起きた二つの出来事は、「核保有は体制の安全を保証するのか」という議論を抽象的な段階から現実の問題へと引き寄せた。トランプ大統領が再び北朝鮮に対話を提案するのか、そして二度の「政権交代」を目撃したキム総書記がそれに応じるのか、今後の動向が注目される。【news1 チョン・ユニョン記者】
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