
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が、年末に向けて自らの「業績事業」と位置付ける建設事業を集中的に点検している。その現場に頻繁に同行する2人の党幹部、キム・ジェリョン(金在龍)規律調査部長とキム・ヨンス(金勇帥)財政経理部長の存在に注目が集まっている。2人は建設事業における汚職や不正を摘発・監督する役割を担っているとみられる。
党機関紙・労働新聞は11月27日、キム総書記が26日、平安北道・新義州の温室総合農場の建設現場を現地指導したと報じた。視察には党中央委員会のチョ・ヨンウォン(趙甬元)、パク・ジョンチョン(朴正天)両書記をはじめ、キム・ジェリョンとキム・ヨンスの両部長、そしてキム・チョルサム平安北道党委員会責任書記らが同行した。
現在北朝鮮では、全国規模の「地方発展20×10政策」に基づき、各地で地方病院や温室農場などの建設が進行中で、年末の党全員会議(中央委員会総会)を控え、完成間近の現場をキム総書記自らが点検している状況だ。新義州温室総合農場の工事も97%が完了し、最終段階にあるとされる。
特筆すべきは、こうした視察に“監視役”とも言える規律調査部長と財政経理部長の両名が毎回同行している点である。これは、建設事業に伴う金銭的不正や責任逃れの慣行が長年にわたり蔓延してきたことを示唆するもので、現地での締め付けと摘発を強化するための措置と解釈される。
2025年9月、キム総書記が平壌総合病院を視察した際も、キム・ジェリョンとキム・ヨンスの両部長が同行していた。当時、キム総書記は「病院建設における不正と混乱が工期を1年半も遅らせた」と激しく非難。「党中央の方針よりも自己の名声を優先した幹部の功名心」「内閣や党中央委員会の組織指導部の旧幹部の失策」などを“弊害”として名指し批判した。
さらにキム総書記は、「財政規律を無視し、総予算の承認もないまま独断で工事を進めた」「後には全国的な募金や支援事業を展開し、党の本来の路線を歪曲した」と述べ、建設資金の運用における深刻な不正行為を示唆した。
同様の構図は他の現場にも見られる。2025年9月8日に亀城市の地方病院建設現場を訪れた際にも両部長を伴い、施工上の偏向を指摘。今年6月9日にも同地を視察し、建設組織と指揮の「非専門性と未熟さ」を批判していた。
北朝鮮は2025年12月中旬に、1年の事業成果を総括する党中央委員会総会を開催する。ここではハイレベル人事を含む大幅な刷新が進められるとの観測がある。キム・ジェリョンとキム・ヨンスの両部長が収集した不正に関する調査報告が、この会議での人事・政策判断に大きな影響を与えるとの見方が広がっている。
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