2025 年 5月 15日 (木)
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北朝鮮の外貨稼ぎ拠点「葛麻観光地区」…「6月開業」目前も外国人向けツアー商品なし

北朝鮮・元山に位置する葛麻海岸観光地区=労働新聞(c)NEWSIS

北朝鮮江原道元山に位置するリゾート施設「葛麻海岸観光地区」が6月に開業を予定しているにもかかわらず、外国人観光客を対象としたツアー商品の販売が確認されていない。北朝鮮は今年3月に一部で再開していた外国人観光を再び中断しており、全面的な観光再開の見通しは依然として不透明だ。

キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記は昨年12月29日に同地区を視察し、ホテルなどのサービス施設を確認。今年6月に本格開業する方針を明らかにしていた。

アメリカの北朝鮮専門メディア「38ノース」は、民間衛星会社「プラネット・ラブス」の衛星写真を分析し、円形劇場やウォータースライダーの設置が進んでおり、リゾート施設の完成に向けた工事が継続中であると報じた。

しかし5月9日現在、観光商品は確認されていない。北朝鮮観光を長年手がけてきた旅行会社「高麗ツアーズ」や「ヤングパイオニアーツアーズ」も、葛麻地区の開業に関する新情報やツアー販売をしていない。

過去には観光中断中でも数カ月分のツアー商品が事前に準備されていたことから、北朝鮮が開業を延期したか、あるいは即座に外国人観光客を大規模に受け入れる計画がない可能性が高い。

一方、開業に向けた準備は進行している模様だ。衛星写真分析会社「SIアナリティクス」は今月3日、キム総書記の一族が利用する元山の別荘でキム総書記の訪問に備える動きが確認されたとし、葛麻観光地区開業に合わせて総書記が現地を訪問するとの見通しを示した。

また、ロシア人観光客を対象とした商品は既に発売されている。ウラジオストクに本社を置く旅行会社「ボストーク・インツール」は、7月7日から14日までの日程で葛麻観光地区を訪問するツアーを販売中だ。

一部の専門家は、6月上旬にキム総書記が出席する盛大な開業式が開かれた後、建設従事者ら功労者に休養の機会を与え、7月からのロシア人観光客の受け入れを手始めに外国人観光を段階的に拡大すると予想している。

北朝鮮は今年3月、コロナ禍で中断していた外国人観光を羅先経済特区から再開したものの、わずか3週間で再び中止した。これは、SNSの普及により北朝鮮に対する否定的な映像や旅行体験談が拡散されたことが原因とみられる。

さらに、今月12~16日に予定されている「平壌春季国際貿易博覧会」に出席予定だった外国人来訪者のビザを直前に取り消すなど、北朝鮮は依然として外国人受け入れに慎重な姿勢を示している。

とはいえ、葛麻観光地区はキム総書記が「世界的な海岸観光都市」として10年以上かけて推進してきた重点事業であり、外貨獲得を目的とした観光開発の第一段階と位置づけられている。そのため、観光再開をこのまま無期限に先延ばしする可能性は低いとみられる。

(c)news1

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