
北朝鮮のスマートフォン「チンダルレ」。自由競争体制とは異なるものの、同国のスマートフォン市場を事実上独占しているブランドが、この「チンダルレ」シリーズだ。月刊誌「金水江山」6月号では「チンダルレ携帯電話に対する人気の領域が日々広がっている」と記され、生産工場と技術力を積極的に宣伝している。
報道によれば、この生産工場は延べ床面積6087㎡に達する。住民の好みや美的感覚に応じた多様なサイズ・形状の「知能型携帯電話(スマートフォン)」を、多品種・少量生産の原則で製造しているという。
この工場は2018年3月に設立され、振動・衝撃試験機などの各種先端設備を自社開発したとし、タッチスクリーンに関連する技術水準が高いことを誇っている。
チンダルレは「アリラン」や「プルンハヌル(青い空)」とともに、北朝鮮を代表するスマートフォンブランドとして知られている。2017年に初登場した「チンダルレ3」は、iPhoneに似た外観で独自に設計・製作されたとされており、以降、数十機種が生産されてきた。
2020年ごろには「チンダルレ7」にAI(人工知能)技術を搭載し、指紋認証・音声認識・顔認識・文字認識の精度が高いと宣伝された。続いて「チンダルレ10」「11」など後継モデルが相次いで登場し、5月には「チンダルレ12」が第23回平壌春季国際商品展示会で公開された。
朝鮮万景貿易会社の職員は在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)機関紙・朝鮮新報とのインタビューで、「チンダルレ12は洗練された外観と色彩、優れた機能で利用者の反響が非常に良い」と語った。
北朝鮮は、既存のスマートフォンに搭載されたAI技術の高度化と、各種アプリケーションの開発にも力を注いでいる。展示会では、マルチメディアメッセンジャー「チンダルレ1.0」や顔認識プログラム「チンダルレ1.0」も広報の対象となった。
一方で、英BBC放送は最近、北朝鮮製のスマートフォンを入手・使用した結果、メッセージ送信時に韓国式表現を自動的に北朝鮮式に変換するか、警告メッセージを表示する機能が内蔵されていることを報じた。
例えば、「オッパ」という言葉を入力すると、自動的に「同志」に変換されるか、「警告」の通知が出るという。
北朝鮮は最新IT技術を搭載した新型スマートフォンの開発・普及を奨励する一方で、それらを通じた監視・統制の強化にも余念がない。スマート技術を活用した情報管理体制が一層強化されているとみられる。
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