
韓国の「非常戒厳」宣布(2024年12月3日)に関連する事件を捜査中の特別検察チームは、2024年10月に当時のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が北朝鮮の挑発を誘導する目的で、無人機を平壌に投入するよう指示したのかどうかを捜査している。軍事専門家らは、裁判の焦点は作戦の実施そのものよりも「その意図」にあると分析している。
北朝鮮の主張によれば、墜落した無人機には偵察用の撮影機器ではなく、ビラを撒くための容器が搭載されていた。また、韓国軍の同型機は騒音が大きく、秘密作戦には不向きであるとの内部証言も報じられている。こうした点から、意図的に敵に察知されやすい状況で投入された可能性が取り沙汰されている。
ただ、これだけで「敵を利する行為(利敵行為)」や「外患誘致」などの重罪に問うには証拠が不十分との見方もある。特に、北朝鮮との内通を立証することは現実的に困難とされている。
一方で、当時の国際情勢や朝鮮半島の緊張状態を踏まえた上で、無人機を平壌にまで投入したという事実そのものが特異な作戦であると認定されれば、「職権乱用」については認定される可能性が高いとの指摘もある。
また、無人機作戦の実行前にアメリカや国連軍司令部との事前協議があったかどうかも争点となりそうだ。軍事境界線以北への軍事行動は休戦協定違反の懸念があり、米国との協議なしに実施された場合、外交上の問題にも発展しかねない。
大慶大学のキム・ギウォン教授は「このような作戦が全面戦争に繋がる恐れがある場合、休戦協定違反の可能性がある」と述べた。
現在、米軍の情報資産に大きく依存している状況から見て、米国に無断で北朝鮮領内に軍用無人機を送り込むというシナリオは現実的ではないとの見方もある。逆に言えば、米国に知らせずに行動したのであれば、韓米同盟の信頼関係に亀裂を生む重大な事案となる。
軍内部では、特別検察の捜査が進むことで韓国軍の無人機能力や作戦内容が過度に露出され、無人機作戦への国民の信頼が揺らぐことへの懸念も出ている。特に現在、無人機能力の強化が求められている中で、戦略的な「曖昧さ」を維持すべきだという声もある。
これに対し、今回の捜査がユン・ソンニョル氏による「内乱」疑惑という異例の事案である以上、必要な証拠についてはすべて捜査当局が確認できるようにすべきだという意見も根強い。
統一研究院のホン・ミン上級研究委員は「すでに公になっている事実が多い中で、機密保持を理由に問題の核心が曖昧になるのは避けるべきだ」と述べた。
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