
北朝鮮とアメリカの間で対話再開の兆しが見え始めている。北朝鮮は米国との「対決」を避けるべきだとする立場を明らかにし、アメリカも非核化交渉への扉が開かれていると表明。対話再開の可能性が注目される中、韓国の専門家らは、現実的な選択肢として「スモールディール」の可能性を指摘している。
北朝鮮のキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党副部長は7月29日、「核を持つ二つの国が対決することは互いにとって有益ではない」と述べ、米朝間の新たな接触の必要性を示唆した。トランプ米大統領との関係が良好であるとの言及もあり、米朝首脳会談再開への期待が高まっている。
北朝鮮は、ロシアとの軍事同盟関係を背景に米国との交渉を再開しようとする動きを強めている。ウクライナ戦争に関与するロシアに対し、軍需物資の支援や1万5000人規模の兵力を派遣し、血の同盟を形成。これは、対中・対米対立構造の中でロシアの後ろ盾を得て、米国に対してより強い交渉力を持つための戦略とみられる。
仮に米朝対話が再開された場合、包括的な非核化を求める「ビッグディール」よりも、段階的な措置を交渉材料とする「スモールディール」の実現可能性が高い。スモールディールとは、北朝鮮の核凍結や一部核施設の廃棄、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射中止などを条件に、制裁の部分的解除や米韓合同軍事演習の縮小を交換する方式だ。
最近の東南アジア諸国連合(ASEAN)地域安保フォーラム(ARF)の共同声明では「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」ではなく、「厳格な非核化(CD)」という表現に緩和された。これは、国際社会が北朝鮮の完全な非核化から、より現実的な目標設定へと軸足を移しつつある兆候といえる。
アメリカ側にとっても、スモールディールは外交的成果の実績を挙げる機会となる。特にトランプ大統領にとっては、ウクライナ戦争や中東問題など国際的懸案が山積する中で、北朝鮮問題の進展を成果としてアピールできる場になる。
一方の北朝鮮も、経済難の打開に向け、制裁緩和による輸出再開や人道的支援の拡大、さらには米朝連絡事務所の開設を通じて国際的孤立からの脱却を図る現実的な手段となり得る。
ただ、北朝鮮が「核保有国」としての認定を求めている点は、最大の障害となる可能性がある。米国にとってこれを受け入れることは、核拡散防止条約(NPT)体制の根幹を揺るがし、同盟国への拡大抑止戦略にも悪影響を及ぼしかねない。
また、非核化の範囲、制裁解除の程度、履行の順序などをめぐる齟齬から、交渉が平行線をたどる可能性もある。過去の米朝交渉でも、行動対行動の原則が守られず、互いに疑念を抱いて合意が履行されなかった事例が繰り返されてきた。
仮にスモールディールに合意したとしても、実際の履行や持続性はまた別の問題である。検証方法や制裁解除の手順を巡る意見の相違が障害となり得る。
さらに、米朝協議が進展する中で、韓国が枠外に置かれる「コリア・パッシング」への懸念も存在する。トランプ政権初期には韓国が米朝首脳会談の仲介者として機能したが、現在は両首脳が直接的に意思疎通をしているため、韓国の影響力は相対的に低下している。
そのため専門家は、韓国政府がトランプ政権と密接に連携し、在韓米軍の撤収や規模縮小などが交渉議題に含まれないよう、外交的な注意が必要だと指摘している。
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