
北朝鮮が「男女平等権法」を制定してから79年を迎える中、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の体制下で女性権利を強調する法整備が活発化している。表向きには性平等を掲げるが、その内実は対外的な宣伝と社会動員の手段に過ぎないとの指摘もある。
北朝鮮の男女平等権法は1946年7月30日に制定され、「国家・経済・文化・社会・政治生活のすべての領域で女性は男性と平等の権利を持つ」と規定している。女性の参政権、離婚の自由、強制結婚の禁止などが盛り込まれた、社会主義国家としての建国初期の象徴的立法だ。
朝鮮労働党機関紙・労働新聞はこの法制定の意義について「植民地統治下で抑圧されていた女性が新たに生まれ変わった日」と称賛。キム・イルソン(金日成)主席が反日婦人組織の設立を主導したことや、「祖国光復会十項目綱領」に男女平等の理念を盛り込んだことを、女性解放運動の歴史的土台と位置づけた。
さらに、キム・ジョンウン総書記が全国母親大会で演説し「女性が国家の全面的発展を担う重要な戦力」と述べたことを引き合いに、女性を重視する姿勢を強調した。
キム・ジョンウン体制下では、こうした立法はさらに進展した。2010年には男女の財産相続の平等、家庭内暴力の禁止、出産の自由の保障、妊婦の夜間労働の禁止、妊娠や結婚を理由とする解雇の禁止、男女の賃金差別の禁止などを盛り込んだ「女性権利保障法」が制定された。2015年には産後休暇を90日から180日に延長するなど、法制度の整備が進められた。
2016年には国連女性差別撤廃条約(CEDAW)の履行状況を報告書として提出し、翌年にはCEDAW委員会から最終見解も受け取った。こうした動きについて、専門家らは「2010年代以降、国連をはじめとした国際社会からの人権批判に対応する意図が強まった」と分析する。
北朝鮮では2010年代中盤以降、「チャンマダン(闇市場)」経済の発展とともに、女性が家計を支える存在として台頭し、労働力・経済主体としての存在感が増してきた。法整備はその現実を反映したものとみられる。
一方で、こうした女性権利の強調は、キム総書記の娘を念頭に置いた後継構想と結びついている可能性も指摘される。
韓国統一研究院のキム・テウォン副研究委員は「国家主導の女性動員スローガンや法制度は、思想教育や労働動員への女性の参加を促す手段として使われている。女性指導者像の演出は、体制の開放性と柔軟性を装いながら後継構図に布石を打つ意図もある」と分析する。
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