2025 年 12月 10日 (水)
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北朝鮮で電子決済が日常に…給与・分配金もカード支給、住民に使用義務化 [韓国専門家コラム]

筆者提供(c)news1

北朝鮮で電子決済が急速に普及している。政府発行の電子カードが給与や農場での分配金支給に使われ、QRコード決済やスマートフォンの電子ウォレットも広まりつつある。国家が制度としてカード使用を義務化したことで、かつては現金中心だった社会が、キャッシュレス社会へと大きく様変わりしている。

北朝鮮で最初に現金カードが登場したのは2005年。朝鮮貿易銀行が発行した「ナレ」カードが先駆けで、その後「コリョ」「ソンボン」「クムピッ(金光)」など、複数の商業銀行が類似機能のカードを発行。ホテルや食堂などで使用可能な加盟店も次第に増加した。

2015年には中央銀行が「チョンソン」カードを発行し、決済だけでなく送金や出金にも対応。電子商取引サイト「オクリュ」「マンムルサン」などの開設と相まって、カード利用は加速度的に広がった。

北朝鮮当局は2021年に「電子決済法」を制定(2023年に改正)し、すべての機関や住民に対してカード使用を義務化した。昨年末からは農業従事者に分配金をカードで支給し、今年初めからは全勤労者の給与がカードで支給されている。

電子決済はスマートフォンの普及と連動して進んでおり、QRコード決済やアプリ決済にも対応。近年では「カンソン」「ウルリム」「サムフン」など、民間開発の決済アプリも登場している。特に「三興電子財布」は数百万人の利用者を獲得したとされる。

この変化は、単なる利便性の向上にとどまらず、当局による現金流通の統制や資金の可視化を通じた財政強化、さらには私的な為替商や貸金業者への監視強化といった目的も含まれている。

電子カードの使用に消極的な住民に対しては、地域単位で「金融教育」が施され、電子決済の定着が図られている。最近では、初歩的な後払いに対応したクレジットカードも登場し、制度の拡充が進む。

北朝鮮では、2005年に初の現金カードが導入されてから約20年で、ほぼ全住民がカードを保有する「現金なき社会」へと急速に移行した。若者は登下校時の交通費、学用品やアプリの購入、オンラインゲームの決済までスマートフォンで済ませており、高齢層もカードで生活費を受け取ることで、自然と「社会主義型金融」の変化に適応している。

北朝鮮当局が掲げる「金融の情報化」は、金融の透明性・効率性を高めると同時に、国家財政の掌握と市場の管理強化にもつながるとみられる。今後は国際社会との交流や投資誘致、南北間の金融IT分野での協力の可能性にも影響を与える可能性がある。【チョン・チャンヒョン平和経済研究所長】

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