
北朝鮮が韓国の「無人機侵入」の証拠として公開した「偵察無人機」について、韓国の専門家は、中国製の市販固定翼ドローンプラットフォームと民間用部品を組み合わせて作られた機体であると分析している。北朝鮮が主張する「軍用」との違いが明らかになってきている。
◆「6時間滞空」など北朝鮮の主張は成立せず
北朝鮮は10日、朝鮮人民軍総参謀部報道官名義の声明で、韓国の無人機が今月4日と2025年9月に自国の領空を侵犯したと主張した。韓国国防省は「軍が保有する機種ではない」と即座に否定した。これに対し、北朝鮮のキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党副部長は11日、国防省の説明について「辛うじて延命のための賢明な選択だ」としながらも、「無人機の実体に対する具体的な説明は必ずなされるべきだ」と圧力をかけた。
北朝鮮は今回の侵入無人機について、機体下部に設置された高解像度の光学撮影機で地上の目標物を撮影する、明白な監視偵察手段であると規定した。しかし、公開された機体の外観や内部構造を分析した専門家は、北朝鮮の説明とは全く異なる結論を出している。
特に韓国・統一研究院のホン・ミン上級研究委員によると、北朝鮮が公開した無人機の機体は、中国の「スカイウォーター・テクノロジー(Skywater Technology)」の「Skywalker Titan 2160」と外観と比率がほぼ一致するという。ホン・ミン氏は「このモデルは世界中のドローン愛好者や産業用UAV製作者が使う市販の固定翼プラットフォームで、軍需品ではなく農業・測量・FPV撮影用に分類され、オンラインでも容易に購入できる」と説明した。
Titan 2160は、翼幅2.16m、機体長1.23mで、6S 16,000〜32,000mAhバッテリー使用時に最大約260kmの飛行、4時間20分以上の滞空が可能だ。しかし北朝鮮は今回の無人機が最大6時間飛行可能だと主張しており、Titan 2160の仕様とは一致しない。
北朝鮮が主張する「高解像度光学偵察」も、公開された装備とは一致しない。機体に装着されたカメラは軍用のEO/IR(光学/赤外線)センサーではなく、RunCam系統のFPV用小型カメラと識別されており、ズーム機能がほとんどない広角レンズに基づくものである。したがって、高度数百メートル以上では目標の識別が難しい。

◆中国製部品を組み合わせた可能性
搭載された部品もすべて民間用だ。機体には「Pixhawk 6C」飛行制御装置、中国製の安価な受信機「Flysky FS-iA6」、市販のGPSモジュール、サムスン製EVO PlusマイクロSDカードなどが搭載されていると見られる。
アサン政策研究院のヤン・ウク研究委員は「北朝鮮がこれまで公開した写真を見ると、無人機を制御する受信機や内部部品のほとんどが中国製の市販品であり、今回の無人機も中国製品と直接的に関連した構成で、軍事偵察用装備とはかけ離れている」と述べた。
韓国国防安保フォーラムのシン・ジョンウ事務総長も「オンラインで誰でも簡単に購入して製作できる機種で、市販部品を組み合わせて同様の形態の無人機を複数作ったようだ」と分析した。
実際、北朝鮮が公開した無人機のコントローラーなど各部品は、アリエクスプレスで購入可能であることが確認されている。特に通信システムは、北朝鮮の「侵入偵察」主張と正面から矛盾している。FS-iA6受信機の実使用距離は、開けた場所で1〜1.5kmに過ぎない。
北朝鮮の主張通り、往復160kmを飛行したのであれば、この無人機は離陸直後に地上の統制所との接続が途切れ、その99%以上を通信不通の状態で飛行しなければならなかったことになる。この場合、可能な方法は出発前に座標を入力し、自動航法で往復させるだけであり、これは目標変更や天候の悪化に対応できない最も原始的な運用方式だ。
北朝鮮が「電子戦手段で強制墜落させた」と主張した部分も、むしろ機体が市販規格である点と合致するとの評価もある。市販のRCリンクや民間用GPSモジュールは、ジャミング(電波妨害)やGPSスプーフィング(位置・時間信号の操作)に非常に脆弱で、航路逸脱や自動航法の誤作動による墜落の可能性が高いからだ。

北朝鮮が公開した撮影対象も軍事的情報価値が低いという点も改めて注目されている。黄海南道平山一帯や開城工団・開城駅は、衛星資産や地上監視ですでに十分に把握可能な地域であり、韓国軍がわざわざ撃墜のリスクや政治的負担を冒してまで、安価なドローンを送り込んで撮影するような「新たな情報」ではないという。
専門家は、実際の運用主体が誰かについては追加の分析が必要だとしながらも、少なくとも北朝鮮が主張する「韓国軍による組織的な監視偵察作戦」と、公開された機体の仕様・部品・運用方式は一致しないと見ている。
また、第9回朝鮮労働党大会を控えた時点でこの事件を公開した点を考慮すると、北朝鮮が「敵対的な二国家」構図を強調するための政治的メッセージとしてこの事案を活用している可能性も指摘されている。
(c)news1

