
北朝鮮が米国と韓国を「敵」と規定する政策が、同国の「国防力発展5カ年計画」と密接に連動しているとの分析が発表された。
統一研究院は5日、「北朝鮮の対敵闘争原則と国防力発展計画:核戦略と対外政策を中心に」と題した報告書を公表。その中で、北朝鮮が国防力発展計画の一環として核兵器体制を強化すると同時に、「対敵闘争」を強調する理由について、両者が切り離せない関係にあるためだと指摘した。
報告書によれば、「対敵」という表現は、2014年にキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の演説で初めて登場した。だが、当時は具体的な対象を示さなかった。
2018年の南北・米朝対話の時期にはこの表現は使われなくなったものの、2022年の党中央軍事委員会決定により戦術核兵器の使用を辞さない「対敵行動原則」が示されたことで、再び強調されるようになった。
報告書は、キム・ジョンウン政権以前に使われていた「対敵性」という概念は、経済的困難や国際的孤立を背景に、対韓強硬・柔軟戦略を使い分けるための一手段だったと分析している。しかし現在は、明確な国家目標と戦略、核兵器という実効性のある手段、さらには多極化する国際秩序を活用しながら、国防力強化の一環として「対敵闘争」が位置づけられていると指摘した。
こうした観点から、北朝鮮の核戦略と国防力発展計画を深く理解することが、米韓に対する「対敵闘争」の本質を捉える鍵になると提言している。
北朝鮮の「対敵闘争原則」に基づく「敵対的二国家論」は、短期的な韓国政府への嫌悪感や軍事的対決姿勢を示すものではなく、北朝鮮独自の戦略的選択の一環であると報告書は分析している。
また、北朝鮮が韓国を「国家」として認める新たな政策を打ち出した背景には、朝鮮半島における核使用の条件を柔軟化し、抑止力を確保する意図があるとみている。
北朝鮮は2019年以降、核兵器の実戦配備と作戦化を進めている。しかし、これまでの「統一を目指す同じ民族」という前提の統一戦線論とは矛盾が生じることになったため、対韓政策の修正が必要になったようだ。
さらに、北朝鮮は核戦略の観点から「民族性」という枠組みを取り払い、韓国を「人質化」することで対米抑止にも効果があると考えている可能性が高いと分析している。
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