
北朝鮮は国連総会の演壇にキム・ソンギョン(金先敬)外務次官を送り出した。平壌から代表団が派遣されるのは7年ぶりで、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の「メッセージ」を携え、非核化や米朝対話をめぐる新たな発信があるか注目される。
キム総書記は9月20~21日の最高人民会議で「米国が非核化を推進しないと確約するなら対話に応じる」と表明し、核保有を前提とする対米姿勢を鮮明にした。一方で「トランプ大統領とは良い思い出がある」と語り、対話余地も残した。26日には核研究者・技術者を集め「強い抑止力こそ平和維持の論理」と強調し、核戦力強化を揺るがぬ方針とした。
こうした状況から、キム・ソンギョン次官の演説は独自の新方針を打ち出すより、指導者の既存メッセージを繰り返すにとどまる可能性が大きい。ただ注目されるのは演説以外の行動である。北朝鮮が国連総会に代表団を派遣するのは2018年の米朝交渉活発期以来であり、ニューヨーク駐在代表部を通じた「ニューヨーク・チャンネル」で米国と接触するのではないかとの観測もある。
もっとも専門家の多くは「今回の派遣は米国との水面下協議というより、国際舞台での存在感誇示が目的」とみる。キム総書記は9月初め、中国の抗日戦争勝利80周年式典に出席し、習近平国家主席と会談するなど中露との関係強化をアピールした。国連を含む多国間外交に活路を広げる姿勢の表れとも受け取れる。
さらに、北朝鮮が過去には外相を派遣したのに対し、今回は国際機構担当の次官にとどまる点も、活動範囲の限界を示す。ちょうど同時期、チェ・ソニ(崔善姫)外相は中国を訪問し、10月10日の党創建80周年に中国要人を招く準備を進めている。
梨花女子大学のパク・ウォンゴン教授は「キム・ソンギョン次官は演説で核保有の正当性を強調し、米国非難や人権問題を主権侵害とする程度の内容にとどまるだろう。主要メッセージはすでにキム総書記が直接発した以上、追加の対米・対南発信は難しい」と分析した。
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