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北朝鮮の朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は27日、平壌市の高級中学校(高校)卒業生300人余りが最前線の国境哨所へ志願したと報じた。北朝鮮当局は青年らが国家のために自発的に献身する意志を示したとしている。
卒業生らは「祖国を守るために銃を持つのは朝鮮の若者の誇るべき伝統」と述べ、「国防の最前線で敵の侵略や挑発から祖国の平和と安寧を確実に守る」と決意を表明したという。
北朝鮮は2021年の党大会以降、全国の青年たちに対し、金属・石炭・鉱業・農業などの「困難な分野」への志願を奨励してきた。表向きは「自主的な志願」だが、実際には当局の指導によって半ば強制的に動員されているとみられる。
例えば、2021年3月には南浦市の青年140人余りが、江西区域の青山農場、温泉郡の農場など、市内20カ所の農場に「志願進出」し、穀物生産に従事したと報じられている。
また、2023年7月に北部地方で発生した洪水では、平安北道・慈江道・両江道の被災地で住宅復旧作業が進められ、ここにも「白頭山英雄青年突撃隊」が動員された。この組織も「自発的」とされるが、実態は政府の指示による強制的な動員と考えられている。
ただ、今回のように軍事関連の志願が大規模となる例は珍しい。北朝鮮はすでに徴兵制を採用しているため、通常、こうした志願活動は経済分野に向けられていた。
専門家は今回の「志願」が、北朝鮮内部で進められている「対敵闘争」キャンペーンの一環とみている。北朝鮮が米韓を「敵」と規定し、「対決」を強調する中で、体制支持を強化する狙いがあるとみられる。
また、ロシアへの派兵による軍への不満を抑えるための措置とも考えられる。米政府系放送局の自由アジア放送(RFA)は、北朝鮮の若者たちがロシア派兵を避けるために自傷行為をする例もあると報じており、軍への不信感が広がっている可能性がある。そのため、若者たちが「自発的に」国防に参加する姿を強調することで、軍のイメージ回復を図ろうとしているのではないかとの見方もある。
キム・ジョンウン(金正恩)総書記は、若者の忠誠心を強調し、体制の安定を図る政策を進めている。今回の志願者も、個人の自由よりも「国家の発展のための献身」を美徳とする価値観を植え付ける狙いがあると考えられる。
(c)news1