韓国の「非常戒厳」宣布(先月3日)以降、北朝鮮が韓国に関する報道を最小限に抑え、「距離を置く」戦略を採用しているとみられる。これまで北朝鮮は韓国の「反政府デモ」を自国の体制宣伝に利用してきたが、戒厳令後はこれらの報道が途絶えている点が注目される。
朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は1月3日、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領に対する逮捕状発行に言及し、「傀儡韓国の政局が麻痺し、社会政治的混乱が拡大している」と報じた。しかし、戒厳令や弾劾という重大な政治的事件を伝える際にも、これまでのような「宣伝調」ではなく、韓国メディアや外国報道を引用する慎重なアプローチが取られている。
特に、戒厳令前に北朝鮮が頻繁に報じていた韓国での「ユン・ソンニョル退陣要求デモ」に関する記事が、戒厳令を境に一切見られなくなった。先月2日まで、北朝鮮メディアは韓国の市民団体や宗教団体によるデモを詳細に取り上げ、「韓国社会の不満」を強調してきたが、同5日以降、ユン大統領の戒厳令発令・解除、弾劾案可決といった事実のみを淡々と伝える報道に転じている。
専門家らは、この変化の背景として、北朝鮮が韓国の政治的混乱に介入することのリスク・実利を考慮していると分析する。北朝鮮が韓国の内政に関与する姿勢を示せば、「非常戒厳」を正当化する口実を与えたり、韓国国内の保守勢力を結束させたりするきっかけとなる恐れがある。また、韓国の「民主的なデモ文化」が北朝鮮住民に影響を与えるリスクも考慮されたとみられる。
北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は「戒厳令前には韓国社会の不満を強調する報道を通じて社会主義の優位性を宣伝していたが、現在は報道の頻度を減らし、選択的なアプローチを取っている。これは、韓国の混乱を利用することで得られる利益が限定的であるとの判断に基づくものだ」と分析している。
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