北朝鮮が11日、韓国の「非常戒厳」宣布の混乱に関して初めて報道し、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の非常戒厳宣言からその後の混乱までを詳細に伝えた。これにより、北朝鮮が自国に有利な内容を選別し、対南宣伝に活用する可能性が高まっている。
北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は「ユン・ソンニョル傀儡(かいらい)が不意に非常戒厳令を宣言し、ファシスト的独裁の銃剣を国民に向けた衝撃的事件が、南側を阿鼻叫喚の地獄に変えた」と報じた。また、非常戒厳の解除を求める国会決議、与党と野党の内乱罪告発、弾劾訴追案の発議と無効化までの一連の流れを詳述した。
さらに、韓国内で開かれた118回目のろうそくデモをはじめ、全国各地で広がる抗議集会の様子も取り上げ、ソウル、仁川、大邱、慶北などの集会写真を21点掲載。「8日から10日まで、韓国全土で抗議のろうそくが燃え続けている」として、韓国内での政権退陣要求が拡大していることを強調した。
北朝鮮は非常戒厳事態から8日後、韓国の状況を初めて伝えた。今回の報道は、北朝鮮当局がこの状況を内部的に分析し、対応方針を決定したことを示唆している。
公式声明や談話ではなく、報道という形式を選んだのは、南側の混乱がどのように収束するか見極めつつ、今後の宣伝材料として活用する意図があるとみられる。
特に、南側の混乱と自国の「社会主義体制の結束」を対比させ、自国体制の優越性を誇示しようとしている。また、昨年明言した「南北は2つの国家」という立場に基づき、韓国に対する敵対心を煽る目的も含まれているとみられる。
また、今回の非常戒厳事態を利用し、韓国の国防や軍事の脆弱性を宣伝に活用する可能性がある。例えば、キム・ヨンヒョン(金龍顕)前国防相の発言に関連する「平壌無人機侵入拠点」や「大韓民国への汚物・ごみ風船攻撃」などの内容がその対象になる可能性が指摘されている。
さらに、韓国軍内部での機密情報の流出や、特戦司令部、防諜司令部、情報司令部などの主要部隊が混乱しているように見える状況も、北朝鮮側の宣伝戦略において有利に活用されるだろう。
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