
北朝鮮が近年、自家用車の個人所有を事実上制度化したことが確認され、住民の経済活動や国内消費への影響が注目されている。中国との自動車取引の増加や、個人登録の法的整備を受け、首都・平壌では黄色ナンバーの車両=私有車=の目撃例が急増している。
北朝鮮は2024年、民法第134条を改正し、自家用車の個人所有と登録を公式に認めた。これにより、過去には国家機関や法人名義でしか所有できなかった車両を、個人名義で登録・相続できるようになった。統一省当局者も「2024年に自家用車所有に関する法的手続きが明文化された」と認めている。
元来、北朝鮮では1998年の憲法改正により、合法的な経済活動による収入とその資産の個人所有が認められていた。しかし、実際には合法収入で自動車を購入できる住民はごくわずかであり、実質的には非公式な所有が主流だった。
近年は、市場経済化や中朝貿易の拡大に伴い、自動車を私的に使用する住民が増加。平壌では2017年頃から黄色ナンバーの車両が登場し始め、2025年には年間8000台以上が販売されたとの推計もある。これを受け、北朝鮮当局は販売・修理拠点の整備にも力を入れており、同年には平壌・和盛地区に「自動車技術サービス所」が開設された。
同施設では自動車の販売や修理、部品交換、無人洗車などのサービスを提供し、車両のレンタルや運転教育も施している。運転免許を取得する女性も増えているという。
自家用車制度化の狙いについては「非公式経済を国家管理下に組み込むと同時に、手数料や登録料を徴収し、国家財政への外貨流入を図る現実的な選択」との見方が有力だ。加えて、車両データの蓄積による交通・社会統制の効率化も挙げられる。
また、同制度化が消費促進や内需拡大を意図している可能性も指摘されており、「中国式市場経済への接近」の一環との分析もある。
自家用車の普及がもたらす影響として注目されるのは、観光・移動の活性化とともに、今後の住宅売買制度化への道筋だ。北朝鮮では既に1998年の憲法改正で個人の住宅所有が認められているものの、実際には「国家からの無償提供」「譲渡不可」の建前が残る。
ただ、実際には書類を整えての非公式売買が横行しており、民間資本が投入された住宅の「分譲販売」も一部で事実上容認されている。
専門家の間では「車の制度化は、住宅市場の合法化の前段階」との声もあり、ある中国企業家は「商業住宅販売の全国規定の導入も、ありえない話ではない」と語る。
北朝鮮では既に2018年、羅先経済貿易地帯で公式に住宅販売を可能にする規定が導入されている。こうした動きを背景に、自家用車制度化が、住宅売買制度化というより大きな構造改革につながる可能性が注目されている。
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