
北朝鮮の国営テレビが、最高指導者に対する暗殺未遂事件を題材にした映画を初めて放送した。指導者の身辺に関わる問題はこれまで「タブー」視されてきたが、それを正面から描いた異例の内容に、専門家の注目が集まっている。
朝鮮中央テレビは今月3日、2022年に製作された映画『対決の昼と夜』を放映した。これは、故キム・イルソン(金日成)主席の暗殺を描いた映画『一日昼一日夜』の続編であり、1990年代の北朝鮮を舞台にした政治スリラーだ。
映画では主人公の検事リ・テイルが実は犯人だったという“どんでん返し”の展開が描かれる。そして最高指導者の暗殺試みを素材で扱っている。北朝鮮において、このような題材をメディアで扱うのは極めて異例とされる。
リ・テイルは、前作でキム主席暗殺を試みた男の息子という設定。父と同様に、列車爆破でキム主席の息子キム・ジョンイル(金正日)総書記の命を狙うが失敗。裏切りと陰謀を重ねた末に国外逃亡する。
映画のラストでは、彼の子孫が北朝鮮に密かに帰国するシーンが描かれ、シリーズ第3作の制作を暗示している。
米国の対北朝鮮専門メディア「NKニュース」は、同作を「悪役が主人公という設定が斬新で、社会の闇を率直に描いている点が特筆すべきだ」と評した。
劇中では「世界は変わりつつある。東欧社会主義の崩壊、指導者の死、大国による経済制裁。そして共和国(北朝鮮)は3日、3カ月、3年で崩壊するという“3-3-3崩壊論”まで語られていた……」という主人公の独白も盛り込まれている。
これは、1990年代における核開発と経済難(苦難の行軍)の時代背景を、外部の分析を借りて描写したもので、従来の北朝鮮映画では見られなかった視点だ。
専門家は「最高指導者への脅威が“世代を超えて続いている”という設定を通じて、住民に対する忠誠心と体制への結束を呼びかけている」との見方を示す。
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