
北朝鮮が年末にかけて、戦略巡航ミサイル、防空ミサイル、原子力潜水艦の建造状況などを相次いで公開し、「地上・空中・海上」にまたがる核戦力の三本柱(トライアド)を前面に掲げることで、独自の核抑止体制が完成段階に達していることを強調した。
12月29日付の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が28日、黄海で実施された長距離戦略巡航ミサイルの発射訓練を現地で視察したと報じた。
訓練の目的は「反撃態勢の検証」および「機動・火力任務遂行手順の熟練」などであり、このミサイルがすでに実戦配備段階にあることを示唆する内容だった。
キム総書記は24日には、新型防空ミサイルの発射実験も視察。これは韓国の最新鋭迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」に相当する射程200km級の地対空兵器とされ、北朝鮮は「高高度長距離反航空ミサイル」と称し、200km上空の模擬標的を正確に命中させたと主張している。
このような一連の動きは、核・ミサイルの攻撃能力のみならず、それらを防御・運用するための多層的抑止力の構築を図っていると受け止められる。
さらに「8700トン級核動力戦略誘導弾潜水艦(原子力潜水艦)」の建造も公表されたことで、キム総書記は地上・空中・海上にまたがる核三位一体体制(トライアド)の各要素を次々と誇示し、核戦力の「新たな完成段階」への到達を国内外に示した格好だ。
北朝鮮は年末にかけて、多様な核兵器の「実戦運用性」と「信頼性」を検証してきた。過去にはICBMの破壊力や射程の向上に注力してきたが、今はより奇襲性・防御性を重視した核兵器体系へと戦略を転換しているとみられる。
昨年10月には「火星-19型」を発射、2025年10月には朝鮮労働党創建80周年の軍事パレードで新型ICBM「火星-20型」を披露しているが、年末時点では試験発射は実施されていない。
トランプ米大統領(2期目)による外交的接触の兆しがある中で、ICBM発射が外交的孤立を招くリスクが大きい。火星-19型の「完成」をすでに主張しているため、火星-20型に改めて注目を集める必要が乏しい――などから、専門家の間では、北朝鮮が火星-20型を発射する可能性は現時点で高くないという見方が有力だ。
火星-20型は、新型の固体燃料エンジンや複数弾頭(MIRV)などの進化した技術に焦点を当てて開発された可能性が高く、必ずしも試験発射を要しないという観測もある。
ただし、米朝対話の停滞が続き、米国による対北朝鮮圧力(人権・制裁)が強化されるなど、情勢が悪化すれば、火星-20型の試射が「切り札」として浮上する可能性は依然としてある。
韓国・統一研究院のホン・ミン首席研究員は「ICBMの使用は、かろうじて開かれている米朝対話の可能性を完全に閉ざす可能性が高いため、北朝鮮が政治的リスクを冒してまで使うとは考えにくい」としながらも、「情勢次第では火星-20型を“外交用カード”として切る場面もあり得る」と指摘している。
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