
北朝鮮が昨年初めから打ち出した「南北は敵対的な二つの国家である」という新たな対韓政策に関する憲法改正が、1年以上経っても実施されていないことが明らかになった。新たな条文の策定を巡る内部議論が難航しているか、あるいは韓国への外交的圧力カードとして意図的に先送りしている可能性があるとみられている。
キム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党副部長は14日の談話で、南北は「敵対的二国家」であるとの立場をあらためて強調。「我が国の法律には、韓国を最も敵対的な脅威勢力と表現し、永続的に固定すべきだ」と発言して、今後憲法改正を実施する意向を示した。
これは、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が2024年1月15日の最高人民会議での施政演説で指示した憲法改正が、いまだ完了していないことを意味している。
キム総書記は2023年12月の党全員会議で「南北は戦争中の敵対的国家関係にある」と規定。翌1月の演説では、憲法に「領土・領海・領空」を明記する新条項を追加し、「統一」や「民族」などの用語を全面的に削除することを指示していた。
この方針は、「特別な民族関係」という従来の立場を撤回し、南を一国家として扱う「国家対国家」モデルを採用することを意図したものだった。
一部では、北朝鮮が憲法を改正済みだが、外部への波及効果を考慮し、敢えて公表を控えているとの見方もある。実際、昨年10月には南北連結道路や鉄道を爆破する「遮断措置」を取り、「韓国を敵国として規定した共和国憲法に基づく」と主張したことがある。
しかし、キム・ヨジョン氏の今回の談話内容からは、まだ憲法改正は実施されておらず、議論が継続中であることがうかがえる。
専門家は、北朝鮮が憲法に新たな国境規定を追加し、南北を別の国家と明記するには、1953年の休戦協定の破棄を意味し、協定当事国である中国の立場を考慮する必要があった可能性があると分析する。
また、昨年からロシアと包括的戦略的同盟条約を締結し、軍事協力を深めていることや、米大統領選の過程でトランプ氏の復権が現実味を帯びる中、対韓戦略を一時保留していた可能性もある。
内部的には、先代で続いてきた「民族統一」理念の放棄には、国民への論理的説明と思想教育の時間が必要だったと見る向きもある。
一部の専門家は、北朝鮮が憲法改正を再び推進する背景として、「非核化議題からの脱却」を挙げる。
慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は「南北が“同一民族”という特殊関係にある限り、韓国は北朝鮮の核問題に関与し続ける根拠を持ち続ける。これを排除するために、法的に『二国家関係』を固定化しようとしている」と述べ、年末の党会議か、来年初の最高人民会議で憲法改正が実施される可能性が高いと予測した。
(c)news1