2026 年 1月 6日 (火)
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北朝鮮、劣悪な「黄ばんだ紙」から脱却へ…金正恩総書記が主導する生活改善の「ディテール戦略」

2025年12月28日、北朝鮮・平安南道殷山郡で完成した紙工場を視察する北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記(c)KOREA WAVE

北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が平安南道殷山郡に新たに建設された紙工場の竣工式に出席し、今後、全国各地に類似の工場を建設する方針を示した。住民生活の改善に力を入れるキム総書記の姿勢はこれまでも見られたが、今回「紙」という日常的かつ些細な物資に注目し、自ら問題解決に乗り出した点が注目されている。

現在の北朝鮮では、学校や職場で依然として「黄ばんだ紙」が広く使用されており、高品質な紙の供給に大きな困難がある。最高指導者自らが紙生産を改善するとアピールするのは、費用対効果の高い民心掌握策として「低コスト・高効率」の象徴ともいえる。

キム総書記は12月28日、新型巡航ミサイルの発射現場視察と並行して殷山郡の紙工場竣工式に出席。翌29日付の労働新聞は、ミサイル関連ではなくこの紙工場の訪問を1面トップで報じ、現在の北朝鮮政権が外交よりも「内部結束」に重点を置いていることを印象づけた。

キム総書記は「地方で入手しやすい材料や複数の木材を活用して多様な紙製品を製造できる技術を導入した、経済的効果が非常に高い新工場が完成した」と述べ、他地域でも同様の工場を建設すべき「模範的経験」となると語った。

また12月3日にも同工場の建設現場を視察し、朝鮮労働党第9回大会で発表される次期5カ年計画の中で「各道が独自に現代的な紙工場を建設する課題」を具体的に討議・決定するよう指示。同9~11日に開催された党中央委員会の年末全員会議でも殷山郡の工場を再び取り上げ、「地域の特性に合わせて立体的な成果を創出せよ」と強調した。

北朝鮮では、燃料不足により木材の多くが燃料用に使われており、紙の原料としての供給が限られている。そのため、リサイクル紙や木材以外の材料を混ぜて製造するケースが多く、紙質は脆弱で実用に耐えない場合もある。

国連開発計画(UNDP)によると、1990年時点で国土の約68%を占めていた北朝鮮の森林面積は、2010年代に入って40%台にまで激減し、森林の荒廃が深刻化している。木材資源の枯渇は紙生産の難しさにも直結している。

北朝鮮メディアも、紙の供給難や品質問題を断続的に報じており、過去には紙の新技術開発を「国家的成果」として伝えてきた。たとえば2019年、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)機関紙「朝鮮新報」は、新義州化学繊維工場が「100%葦(ヨシ)を使用した紙の製造工程を構築している」と報じ、2025年7月には対外宣伝メディア「ネナラ」が「落葉を活用した紙製造技術を開発」とアピールした。

しかしこれらは、技術的には新しいものというより「苦肉の策」に近く、紙資源の確保がいかに厳しいかを物語っている。

慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は「北朝鮮では依然として『黄ばんだ紙』の使用が主流であり、紙の生産問題は深刻だ。インフラ整備を通じて『人民大衆第一主義』を演出しようとするキム総書記が、紙工場の建設にも積極的に関与している」と分析している。

(c)news1

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