2025 年 5月 20日 (火)
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北朝鮮、なぜ「脆弱な戦力」あえて公開するのか…海・空軍強化に“ロシアの影”

北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記

北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が、これまで弱点とされてきた海軍と空軍の視察を強化し、戦力強化を強調している。ミサイルや特殊部隊を前面に押し出してきた従来とは異なり、劣勢とされる軍種を前面に出す戦略変更は、ロシアとの軍事的接近を背景とした「強化アピール」との分析が出ている。

北朝鮮は5月14~15日、「第7回人民軍訓練幹部大会」を開催した。これは10年ぶりに開催事実を公開したもので、過去2015年の第5回以降、第6回(2018年)は非公開だった。

大会を前にキム総書記は▽4月2日:新型駆逐艦「チェヒョン(崔賢)」の進水式▽4月28~29日:「チェヒョン」号の武器システム試験発射▽5月上旬:戦車・砲弾工場の視察、短距離弾道ミサイル訓練指導▽5月13日:特殊部隊の統合訓練を現地指導――など、連日のように軍関連施設を視察。実戦訓練よりも視察に重きを置く姿勢は「劣勢とされる戦力も強化されている」と誇示する意図が読み取れる。

特に注目されるのは空軍での動きだ。キム総書記が視察した空軍部隊では、老朽化したMiG-29戦闘機から新型の空対空ミサイルや滑空誘導爆弾を発射し、無人機や巡航ミサイルの標的を撃墜する訓練が実施された。

このミサイルは米国製AMRAAMや中国のPL-12に類似しており、PL-12がロシアの技術支援で開発された点を踏まえると、ロシア由来の兵器が北朝鮮に移転された可能性が高い。一部では、ロシアの空対空ミサイル「R-27」の改良型との見方もある。

加えて「北朝鮮版イージス艦」と呼ばれる「チェヒョン」号の武装や防衛システムも、ロシアの技術と酷似。搭載された巡航ミサイルの外形も、ロシア製の極超音速巡航ミサイル「ジルコン」に類似しているとされる。

キム総書記は2023年9月に訪露し、プーチン大統領との首脳会談後に戦闘機工場とロシア空軍基地を視察しており、この時点で軍事協力に合意していた可能性が高い。

5月13日に実施した特殊部隊の統合訓練では、初めてドローン部隊の存在が公開された。これは、ウクライナ戦争に兵力や物資を提供した見返りとして得た実戦ノウハウを反映したものであり、ドローンの機体や運用方法にもロシアの影響が色濃く出ていると見られている。

今年は北朝鮮の「国防力発展5カ年計画」の最終年だ。キム総書記が空・海軍の強化を自ら視察し、“露への追加支援要求”のメッセージを込めた可能性もある。すでに海軍では原子力潜水艦の配備を進めており、今後は空軍でも核兵器搭載能力を追求する“全軍核武装”に向かう可能性も指摘されている。

(c)news1

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