
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が、年末から来年初めにかけて開催される第9回党大会で「核戦力と通常戦力の併進路線」を打ち出す方針を明らかにした。従来の「核一辺倒」の国防戦略を修正し、地上戦力の強化とともに国際情勢への積極的介入を狙う新方針とみられる。
朝鮮中央通信によれば、キム総書記は9月11日と12日、国防科学院傘下の「装甲防御兵器研究所」と「電子兵器研究所」を視察。そこで「党大会では核戦力と通常戦力を同時に推進する政策を提示する」と述べ、国防科学院に通常戦力の近代化を強調した。視察では新型能動防護システムを搭載した戦車の防御実験も実施され、北朝鮮が地上軍強化に動いていることを示唆した。
北朝鮮はこれまで「力の対決」のため核開発に注力してきた。2013年には「核・経済併進路線」を掲げ、2017年に「国家核武力完成」を宣言。2021年の第8回党大会では「戦略兵器5大課題」として超大型核弾頭、固体燃料ICBM、極超音速兵器などの開発を打ち出し、一定の成果を上げてきた。
今回の方針転換は、戦略兵器だけでなく「実戦用兵器」の近代化を進める狙いがあると分析される。ロシアのウクライナ侵攻で確認されたように、戦車や防空兵器など大量の通常戦力も戦局に大きな影響を与えるからだ。北朝鮮はドローン攻撃への対抗を含め、実戦的な装備を強化しようとしている。
背景には、地域紛争への関与を視野に入れた判断があるとみられる。米国がインド太平洋で対中包囲網を強化する中、北朝鮮が中国を支援して軍事介入する可能性も想定される。その場合、核戦力に加え、高度な通常戦力が不可欠となる。
さらに北朝鮮は、兵器輸出を通じた外貨獲得も狙っている。2023年にはキム総書記が「国防経済事業」に言及しており、ロシア向けを中心に武器販売の実績もあるとされる。韓国国防研究院研究センター長のイ・ホヨン氏は「権威主義国家は安価な兵器を大量供給する傾向がある。北朝鮮も同様の方向性を持っている」と指摘した。
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