
北朝鮮が最近、住民による自家用車の“合法的な登録”を可能にする動きを見せており、これを通じて非公式経済を制御し、国内経済の実態を把握しようとしているとの分析が出ている。
韓国統一省は21日、「北朝鮮が自家用車の個人所有を認める動きが確認されており、現在その動向を注視している」と明らかにした。
北朝鮮の現行民法では、自家用車を個人が所有できるとされていたが、実際には朝鮮労働党幹部や外国人を除けば、車両の名義は主に事業所や企業に属するのが慣例だった。だが、昨年2月6日に改正された民法には「合法的な登録」を経て個人が車や家畜を所有できるとの文言が新たに盛り込まれた。
実際に確認された改正民法第134条(個人所有権の対象)には「公民は家庭生活に必要な生活用品と、合法的な登録を経た自家用車や家畜などを所有できる」と明記されている。2007年の旧民法には「登録」の概念が存在せず、今回が初の明文化となる。
これにより北朝鮮当局は、これまで非公式に存在していた個人財産を“登録”によって制度的に把握し、経済活動全体を統制・課税可能な体制に移行しようとしていると見られる。
特に注目されるのは、北朝鮮の経済における「トンジュ」と呼ばれる新興富裕層の存在だ。市場(チャンマダン)経済を支えてきた彼らは、国家統制外の“地下経済”を象徴してきたが、今回の民法改正はこうした非制度的な資産を合法経済の枠内に取り込む狙いがあるとみられる。
さらに、登録財産に対しては将来的に“登録税”や各種課税が進められる可能性も指摘されている。
1990年代後半の「苦難の行軍」以降、各地で台頭したトンジュは現在、その8割近くが姿を消したとされ、北朝鮮当局は地下経済の取り締まりを強化してきた。今回の民法改正も、そうした一連の政策の延長線上にあると分析されている。
一方で、今回の動きは北朝鮮社会の変化を反映しているとの見方もある。制度化に対する住民の反発が以前より少ないという判断のもと、国家があえて“陽の当たる場所”へと導こうとしているという観測だ。とはいえ、実際には特権層だけに適用される可能性も指摘されている。
韓国・慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は「社会主義文明国家を標榜しながら、特権層を対象に車両所有を容認し、同時に国家が得られる利得を見込んでいる。自動車税などによる課税効果もあるだろうが、それよりも内需経済をより透明に把握・統制する管理手段と見るべきだ」と分析した。
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