2024 年 12月 26日 (木)
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前政権時に改善策論議、その後先送り [KWレポート] サービス残業の世界 (2)

韓国国会の本会議場(c)MONEYTODAY

韓国の与党「国民の力」と政府だけでなく、野党も包括賃金制の改革に同意しており、今後、国会でも関連議論に拍車がかかる見通しだ。事実、包括賃金制の制限または禁止を先に主張したのは野党だった。「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は最近、「包括賃金制は事実上、労働時間の延長を図り、サービス残業を強要する制度だ。必ず改革していく」と話した。

国会には現在、包括賃金制の補完に関連する労働基準法改正案が計3件発議されている。

共に民主党のウ・ウォンシク議員が代表発議した改正案は、長時間労働の主要原因と指摘されている包括賃金契約を制限し、使用者が労働時間を測定・記録し、雇用労働相に提出するようにする内容を含んでいる。

同党のパク・ジュミン議員の法案は、包括賃金契約の禁止を明示的に規定し、違反時に過料を賦課する内容を含んでいる。野党「正義党」のリュ・ホジョン議員案は、包括賃金契約を禁止する条項を新設し、労働時間、賃金など立証責任を使用者が負担するようにする。

包括賃金制を禁止しなければならないという主張は、きのう・きょうの話ではない。ムン・ジェイン(文在寅)前政権時代に100大国政課題の一つとして「包括賃金制廃止」が挙げられていた。2017年11月、雇用労働省は「包括賃金制事業所ガイドライン」草案を用意した。しかし、労働基準法上明示されていない制度にガイドラインを作ること自体、悪用を煽る恐れがあるという理由で適用が先送りされ、議論はうやむやになった。

◇出退勤記録・管理システム

労働専門家は、包括賃金制の改革のためには何よりも正確な実態把握が重要だと強調する。

韓国労働研究院のオ・ゲテク先任研究委員は、次のように指摘する。

「法・制度ではないのに現場では便利な部分があるため、包括賃金制が拡大してきたのだろう。慣行的に続いてきたため、包括賃金制に対する実態調査や研究は多くない。たとえ議論の起点が『労働時間の柔軟化』という観点からずれるようなことになっても、包括賃金制の実態を適切に把握し、そこから問題点と不公平を正すべきだ」

包括賃金制を禁止したり、厳格に適用したりして、超過勤務に適切な報酬を与えるためには、正確に何時間勤務したのか、出退勤時間を記録・管理するシステムが必要だ。大企業では顔・指紋認証、出入り記録などを通じて労働時間を測定するシステムが備わっている。だが、中小企業や5人未満の事業所、あるいは自営業者などでは、こうしたシステムが導入されていないところが大多数だ。これに対し、政府は労働時間を記録するアプリを開発する案を検討している。

実態調査とシステム構築が進められても、社会文化的な適応期も必要だ。

「システムが開発されて会社が導入しても、人がそれに適応する時間も必要だ。サービス残業の根絶や休みの保障など、政府の政策趣旨通りに慣行が定着するには2~3年以上かかるだろう。労働政策には、労使で利害関係が異なるうえ、労働者間で意見が割れるという特徴がある。これをしっかり考慮したうえで推進すべきだ」

オ・ゲテク氏はこう強調する。

(つづく)

(c)MONEYTODAY

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